穢銀杏狐月

穢銀杏狐月

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

夢日記

迫る台風、募る心労

大正時代に活躍した医学者にして文筆家、小酒井不木はその著書に於いて、 病中癪に障るものの一に検温器がある。検温器そのものが癪に障るのでなくて検温器の示す度数が癪に障るのである。よく考へて見れば検温器は正直に体温を示してくれるのであるから少し…

夢路紀行抄 ―墓参り―

夢を見た。 死者と話す夢である。 祖母の墓に詣でるために山奥の実家に向かったところ、なんと遺骨壺に納められたはずの祖母その人が、玄関口で 「てっ、よく来たじゃんけ」 と大層賑々しく出迎えてくれたからたまらない。 視界がくるめくような戸惑いに襲わ…

夢路紀行抄 ―絡みつく水―

夢を見た。 プールで泳ぐ夢である。 屋内型のプールであった。 幅は、広い。縦横ともに、明らかに五十メートルを超えている。 ところがその広いプールの総てのレーンに先客がいて、私の泳ぐ余地がない。 誰かが上がり、レーンが空くのを待つべきか? いや、…

夢路紀行抄 ―嵐の夜に―

風の音に聾され続けた夜だった。 台風15号が関東平野を舐め上げるように通過していった昨晩の話だ。吹き付ける風雨の凄まじさに家の骨組が悲鳴を上げて、その不吉な音色とひっきりなしな震動に、ともすれば防空壕でB-29の爆撃に耐え忍ぶ戦時中の方々の心に僅…

夢路紀行抄 ―キングギドラと赤備え―

夢を見た。 死の宣告の夢である。 月報、広告、押し花、新聞紙の切り抜き等々、購入した古書の中に「何か」が挟まっていることは、私自身多く経験したことである。 しかしながら硬貨が滑り出て来たことは、今朝の夢以外では未だない。それは床に落下して、硬…

夢路紀行抄 ―アポカリプスと乾電池―

夢を見た。 滅びた世界の夢である。『フォールアウト3』に於けるキャピタル・ウエイストランドのような、文明の痕跡がそこかしこに点在する荒野を彷徨っていた私は、やがてマンション――いや、アレは団地と呼ぶべきか――を発見。何か役立つ遺物はないかと期待…

夢路紀行抄 ―泥の浴槽―

夢を見た。 温泉のデモンストレーションを見物している夢である。 浴槽には最初、突っ込んだ指先がすぐ見えなくなるほどに濃い、きたならしい黄土色の泥水が満たされていた。そこへその温泉の湯を注ぐと、なんたることか、みるみるうちに濁りが晴れて美しい…

夢路紀行抄 ―夢中夢―

なかなか珍しい体験をした。 二重に夢を見たのである。 最初はパソコンがウィルスにやられてクラッシュする夢だった。ディスプレイを占拠するのは懐かしのブルースクリーン。 (Wikipediaより、ブルースクリーン) 対処法を探るべく傍らのスマホを手に取るも…

夢路紀行抄 ―八面玲瓏―

夢を見た。 富士を仰ぐ夢である。 確か、借りていたDVDの返却期限を勘違いしていたのが事のはじまりだったと思う。てっきり明日だと思い込んでいたのが、今日だったのだ。 あと六時間もすれば、延滞料として余計に金をとられてしまう。 (これはいかぬ) と…

夢路紀行抄 ―焼け跡―

よほど現状に不満があるのか、夢の私は学生時代に戻っている率が非常に高い。 今日の夢もそうだった。といっても、正確には半々だが。 修学旅行生として荷造りをし、バスに乗り込んだところまではよかったのだが、座った席はどういうわけだか運転席。子供の…

夢路紀行抄 ―軟体動物―

夢を見た。 山の中の夢である。 ふと気が付けば私は独り登山に勤しんでおり、強烈な斜度の鎖場を、滑落の恐怖と闘いながらひいこら喘いで攻めていた。 やっとの思いでそこを越えると、千古斧鉞を加えざる老樹の緑のその中に、ひどく不似合いなものがある。 …

夢路紀行抄 ―浮気者―

夢を見た。 父親が死ぬ夢である。 風邪をこじらせぽっくり逝ってしまったと電話口で知らされて、慌てて帰省してみれば、なんたることか私を出迎えてくれたのは、馴染み深いキジトラ柄の愛猫ではなく、すわ狼かと見紛わんばかりの精悍な顔つきをした柴犬だっ…

夢路紀行抄 ―ドラッグストアのウィッチャーゲラルト―

夢を見た。『ウィッチャー3』の主人公、リヴィアのゲラルトが日本の市街でラグビー選手に化けていた吸血鬼と死闘を繰り広げる夢である。 やがて角を切り落とされた吸血鬼は――どういうわけかこの吸血鬼には額から、角が一本、それも瘤だらけで血管の浮き出た…

夢路紀行抄 ―心臓祭り―

夢を見た。 猟奇的な夢である。 夢のなか、中学生に戻った私は教師から、耳を疑う指令を受けた。なんでも新学期を始める前に心臓を取り換える必要があるから、これで適当に見繕って来いと言うのである。 教科書を買い揃えろとでも告げるに等しい、いともさり…

夢路紀行抄 ―強制労働―

夢を見た。 収容所にぶち込まれる夢である。 最初、私は船の甲板に立っていた。 今となっては映画の中か、どこぞのテーマパークにでも赴かねばまずお目にかかれぬ、古式ゆかしき三本マストの風帆船の甲板に、だ。 周囲は暗い。夜の海を、船は滑るように進む…

夢路紀行抄 ―三本立て―

夢を見た。 紫色の空の下、『星のカービィ』シリーズに登場する無敵の砲台――正しくはシャッツォとか云う名前らしい――からの集中砲火を浴びせられる夢である。 段差を利用したり、落とし穴に潜んだりしてなんとか命を繋いでいると、唐突に場面が切り替わる。…

夢路紀行抄 ―オカイコサマ―

夢を見た。 しゃくしゃくと、お蚕様が葉っぱを喰らう夢である。 夢の中で、私はバイクに乗っていた。現実には原チャリ以上の二輪車を運転したことなどないくせに、夢の私は器用な手つきでメタリックに黒光りするその車体を操って、やがてたどり着いたのは、…

夢路紀行抄 ―ドレミー・スイートへの陳情―

夢を見た。『東方Project』の登場人物――十六夜咲夜と氷精チルノが鬼の洗濯板みたく粗くて急な山肌を、自転車に乗ってどちらが先に麓まで駈け下りられるか競争している夢である。 むろん、勝負は咲夜のぶっちぎり。大人気ないくらい全力を出してペダルを漕い…

夢路紀行抄 ―水餃子と強い酒―

夢を見た。『カイジ』シリーズの登場人物、黒崎義裕――帝愛グループ№2のあの男と餃子を喰う夢である。 種類は典型的な水餃子で、皮越しにうっすら透けて見えるニラの青さがあざやかだった。 そしてその、餃子を口に運ぶ合間合間に黒崎義裕が語るのである。 内…

夢路紀行抄 ―理解を絶す―

夢を見た。 わけのわからぬ夢である。 まず、私は湿地帯を彷徨っていた。曲がりくねった木が生い茂り、日中でも薄暗く、足元の泥濘はいちいち膝下までずっぽり埋まる、これ以上の難路にはちょっとお目にかかれないであろう場所である。 出没する生物も酷い。…

夢路紀行抄 ―バイオハザード―

夢を見た。 死人が動いて死人を増やす、所謂バイオハザードチックな夢である。 グロテスクだが、しかしそれ以上の問題は、私がその病原菌を売り捌いて金を得る、所謂元凶的立ち位置に居たことだろう。 さりとて断言しておきたいのは、あの日、あの街で発生し…

夢路紀行抄 ―不立文字―

「真理は口にした瞬間真理でなくなる。一切はこれ不立文字――」 そう叫び、みずからの喉を掻っ切った男がいた。 今朝の夢の中に、である。 迸る鮮血を浴びながら、ああ、とうとうやってしまったか、遺族にどう説明すりゃいいんだ阿呆垂れめ、と頭を抱えたとこ…

夢路紀行抄 ―気の病―

夢を見た。 現在腰を据えている、このアパートのトイレの電球がさかんに明滅を繰り返し、最終的にはブレーカーを落としてもそれが治まらなくなる夢である。 緑色に輝いている瞬間もあったように思う。 私には軽度の強迫性障害のケがあって、たとえば夜布団に…

夢路紀行抄 ―はちあわせ―

夢を見た。 海に沈む夢である。 といっても、別段海難事故に遭ったとか、そういう負の事情に依るのではない。ヒレだのゴーグルだのボンベだのと、きちんとダイビング用の装備を整え、万全を期した上でのことだ。 その海域で発見された、新種の海洋生物を撮影…

夢路紀行抄 ―狂人哀歌―

夢を見た。 正気を失わんとしてあらゆる手段を講ずれども甲斐がなく、ああ、何故俺は狂うことすら満足に出来んのだと嘆き悲しむ男の夢だ。 夢野久作の読み過ぎである。先日、全集を買ったのだ。 『猟奇歌』は生田春月とは別のベクトルで魅力的な詩(うた)で…

夢路紀行抄 ―よろしければどうですか―

夢を見た。 献血の影響がもろに出たに違いない、とんでもない夢である。 夢の中で私は例の寝台に横たわり、血抜きが完了するのを待っていた。 空の血液パックを入れた装置にデジタル式の大きなメーターが付いており、400からスタートした表示が1秒毎に丁度3…

夢路紀行抄 ―高尾? 高尾!―

夢を見た。 山に登っている夢だ。 高尾山と呼ばれていた気もするが、登山道といい標高といい何一つ現実の高尾に似たる部位はない。あまりに険しく、またあまりに人気がなさ過ぎるのである。夢の高尾と呼ぶべきか。 膝上までずっぽり埋まる雪中を、ラッセルし…

夢路紀行抄 ―呼吸困難―

夢を見た。 電子たばこと間違えて、殺虫剤を肺に入れる夢である。 前後に色々あったはずだが、その一事が衝撃的過ぎて憶えていない。 ところが夢でよかったと思う間もなく、目覚めるや否や喉に違和感。粘膜がささくれ立っているような、むず痒いような感覚が…

夢路紀行抄 ―雷の巣―

夢を見た。 紫電閃く夢である。それも一本や二本ではない。突如としてこの関東平野の一角に、マカライボの灯台が如き稲妻の雨が出現したのだ。 至近距離に落ちた際、電化製品から飛び散った火花の鮮やかさを今なおはっきり記憶している。 が、ありようは何て…

夢路紀行抄 ―死してなお、ひとり―

賽の河原にひとりきり。 迎えの舟は影もなく。 石積む子供も、崩す鬼も居やしない。 地獄が経営破綻でも起こしたのかしらん? 問うても答える声はなく。 幽(かす)かなる、三途の川のせせらぎのみぞ響きける。 ――そんな具合の、夢を見た。 ここまでお読みい…