穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

夢日記

夢路紀行抄 ―クリーニング―

夢を見た。 清掃作業の夢である。 最初は確か、スケルトンの処理だった。 骨の怪物、生者を狙う死霊の一種、バラバラになったその残骸を拾い集めて、作業台の上に載せ、槌を思い切り振り下ろす。どんなに優れた考古学者でも復元不能な、粉末状に成り果てるま…

夢路紀行抄 ―液体生命―

夢を見た。 神の御業の夢である。 最初はハンドクリームだった。 真珠を融かしたかの如く鮮やかに白いその軟膏を一掬いして、きゅっと掌(てのひら)に握り込む。するとどうだ、中でどんどん体積を増し、ついには指の合間から、河となって流れ出したではない…

夢路紀行抄 ―プランテーション―

夢を見た。 久方ぶりの夢である。 私は農場で働いていた。 いや、これを農場と呼んでいいのかどうか。 世話しているのは桃でも葡萄でも小麦でもなく、カマキリの卵なのである。 (Wikipediaより、オオカマキリの卵鞘) 畝に根を張る、なんだかよくわからない…

夢路紀行抄 ―今年最後の夢模様―

夢を見た。 「今日でよかった」、心の底からそう思わされる夢である。 私は山の中にいた。 雪が積もっている。膝の上までゆうに没する。完全な冬山の景である。 いとも容易く人を呑み込む山中異界。斯くの如き危険地帯をなにゆえ進んでいるかというと、理由…

夢路紀行抄 ―地下に轟く稲光―

夢を見た。 雷の鳴る夢である。 私は階段を下りていた。 幅は狭い。おちおち両手を広げることも叶わない。 手すりもなく、バリアフリーなど思いもよらぬ旧態然とした造り。照明は薄く緑がかって、左右の壁にビッシリ描かれた落書きを、文字とも模様ともつか…

夢路紀行抄 ―八本脚―

三日前、蜘蛛を始末した。 壁に張りつき、止まっているのを発見次第、ティッシュを引き抜き、ぱっと突き出し、果たして狙い過たず、圧殺してのけたのだ。 反射に等しい作業であった。 残骸を検め、確かに殺ったと安心し、ゴミ袋に叩き込みにゆくすがら、ふと…

夢路紀行抄 ―チェックポイント―

夢を見た。 ヤケを起こす夢である。 錆びたパイプが石造りの壁を這う、日の差しにくい裏通りでのことだった。 肉厚のナイフを逆手に持って、私は獲物の隙を窺う。くたびれきった作業服に身を包む、ガラの悪い男ども。彼らを始末せぬ限り、この先に――目的地に…

夢路紀行抄 ―亜大陸―

夢の中では往々にして感覚器官が鈍磨する。 特に舌はその影響が顕著であろう。 今朝方とても、酒瓶ほどの太さを有するソーセージに齧りついていたのだが、何の味もしなかった。 そこはインドの料理屋で、いや日本にあるインド人が経営する店でなく、本当にあ…

夢路紀行抄 ―飛翔体―

夢を見た。 夜天を焦がす夢である。 眠りに落ちて暫しの後。ふと気がつくと、見晴らしのいい場所にいた。 どうやらビルの屋上らしい。 それもかなりの高層ビルだ。 地球の丸みを実感できるほどではないが。 地面を行き交う自動車が、豆粒に見えるほどではあ…

夢の分解 ―小氷期を希う―

夢を見た。 北海道の夢である。 かの試される大地の上を、北条沙都子と古手梨花――『ひぐらしのなく頃に』の主要登場人物二名がバイクに乗って突っ走ってる様を見た。 互いに成長した姿であること、言うまでもない。 バイクは一台。運転する沙都子の腰を梨花…

夢の欠乏 ―かねて血を恐れたまえ―

どうも近ごろ、夢を見ない。 もしくは、見てもすぐに忘れてしまう。 今朝方からしてそうだった。何か、長大なドラマの展開を目の当たりにした感じがするが、さてその詳細はというと、言葉に詰まらざるを得ぬ。 唯一はっきり憶えているのは、『彼岸島』の主人…

夢路紀行抄 ―粉々に―

夢を見た。 砕け散った夢である。 まず、私の身長が一気に15㎝以上も伸びて、196㎝になっていた。 後から思い合わせると、この数字の出どころはサントリーの缶チューハイに屡々プリントされている「-196℃」とみて相違ない。 常日頃、何に興味を惹かれている…

夢路紀行抄 ―蘇生の代価―

夢を見た。 噛み殺される夢である。 ここのところ、南洋関連の書籍を好んで読み漁った影響だろう。蛮煙瘴雨の人外境が、ものの見事に昨夜の夢寐に再現された。 私はそこで、何かしらの調査事業に携わっていたらしい。 半球型のコテージまで建て、拠点とし、…

夢路紀行抄 ―機会損失―

夢を見た。 本を探す夢である。 舞台はどこぞの古本屋、それも床は打ちっぱなしのコンクリートに、照明は等間隔で吊るされた裸電球数個という、いかにも(・・・・)な雰囲気の店だった。 カウンターにでん(・・)と置かれたラジカセからは、どういうわけか…

夢路紀行抄 ―寝相、うつ伏せ、ショットガン―

どうも近頃、寝相が悪くて難儀する。 意識が眠りに落ちる前、確かに姿勢は仰向けだった。にも拘らず朝目覚めると一八〇度反転し、うつ伏せ状態になっている。そのくせ布団にさしたる乱れもないのだから不思議としかいいようがない。いっそカメラでも設置して…

夢路紀行抄 ―覗きの報い―

夢を見た。 機械と猫の夢である。 時刻は夜。私はどこか、海に近いホテルの一室に投宿していた。 部屋立ては、なんてことない。 テレビにベッド、こじんまりした丸テーブルと、簡素ながらも必要十分な道具は揃ったありきたりのビジネスホテル風である。 が、…

夢路紀行抄 ―原始的な精密機械―

夢を見た。 電子回路の夢である。 遮光カーテンを閉め切った部屋、薄ぼんやりとした光源。洞窟を思わせる湿った空気を吸いながら、私はただもうひたすらに、めちゃくちゃな桁数の四則演算に取り組んでいた。 道具は鉛筆と藁半紙、それと自分の頭のみ。原理は…

夢路紀行抄 ―そうは問屋が卸さない―

夢を見た。 とち狂った夢である。 紅魔館の庭先で、十六夜咲夜と紅美鈴が相撲をしていた。 むろん、まわし一丁の姿で、だ。 神聖な土俵にあがる以上、当然の仕儀といっていい。 ただ、どういうわけかカチューシャと人民帽だけは、それぞれ被ったままだった。…

夢路紀行抄 ―脱衣ロッカー大迷路―

夢を見た。 転換激しい夢である。 最初は確か、工場だった。 私は灰色がかった作業服を着てベルトコンベアの前に立ち、延々と運ばれてくるプラ容器にハンバーグを詰める作業に没頭していた。 このあたり、背景を探るに難はない。 間違いなく夕飯の献立の影響…

アジア主義者の肝試し ―京橋区の幽霊旅館―

毒が残っているやも知れない、素人捌きのフグ鍋を、好んで囲んだ江戸っ子のように。 あるいは狭い室内で、無数の兎を撃ちまくり、点数を競った仏人のように。 男というのは度胸試しが好きでたまらぬいきものだ。 (長谷川哲也『ナポレオン ―覇道進撃―』1巻)…

夢路紀行抄 ―間違い電話―

夢を見た。 埒のあかない夢である。 直前まで何をしていたかは憶えていない。鮮明なのは、携帯がけたたましく鳴り響いてからである。 着信を知らせる音色であった。 私は特に発信元の番号を確かめもせず、半ば反射でそれに出る。後から思えば迂闊としか言い…

夢路紀行抄 ―シタタカ毒虫―

夢を見た。 有名人の夢である。 始まりは、確かショッピングモールの通路であった。 全体的に黄色みがかった配色で、ただもうそこに居るだけで、細胞が踊り出すような、陽気な気分になってくる。 建築の妙と言うべきだろう。 幅も広い。重戦車でも悠々走行で…

夢路紀行抄 ―期限の束縛―

夢を見た。 迂闊千万な夢である。 駅へと向かう道すがら、私のアタマに唐突に、ずっと昔に借りたまま部屋の隅っこに転がしっぱなしのDVDが浮かんだのである。 (しまった) あわてて引っ返すことにした。 が、先刻通過した際には影も形もなかった筈の抗議デ…

夢路紀行抄 ―八重鳥居―

夢を見た。 石畳をゆく夢である。 おそらくは御影石であろう。幾何学的な美しさを以って敷き詰められたその上を、一歩一歩地面の堅さを確かめるような足取りで行く。 道の先には古色蒼然とした鳥居があった。 大鳥居といっていい。 その気になればバスでもト…

夢路紀行抄 ―験を担いで―

夢を見た。 麻雀を打つ夢である。 いつからか、私はバスに乗っていた。ガタゴトと揺れるそのバスは、どうやら山形県の海岸沿いを走行中であるらしい。窓外を、いちめん蔦に覆われた、今にも崩れ落ちんばかりの喫茶店が横切った。 ――目的地までは、だいぶ間が…

夢路紀行抄 ―鏡に映るは―

夢の中で鏡を覗くということは、考えようによってはひどく不気味な行為でないか。 丁度そんな体験をした。 つい今朝方のことである。 手洗いを終え、水滴を拭っている最中、何の気なしにふと顔を上げ、目の前の鏡に視線を投げる。 どこの家の洗面所にもあり…

夢路紀行抄 ―変態する同居人―

夢を見た。 鳥が猫になる夢である。 夢の舞台は、現実の私の部屋と変わらない。そっくりそのままといっていい。枕元の時計の位置まで完全に再現されていた。 ただ一点、明確な差異は、窓のサッシに鳥の巣が出来ていたことか。 藁や枯草を組み合わせて設えら…

夢路紀行抄 ―不思議のダンジョン「狛犬の台座」―

夢を見た。 門前町の夢である。 神社への参道沿いに細長く形成されたその町は、歴史の滲みた土産屋などがところせましと軒を連ねて、参拝客でごった返し、あたかも縁日の趣を呈していた。 ――わが国目下の情勢では顰蹙を買うに相違ない、そんな光景の只中を。…

夢路紀行抄 ―きれいにならぬ―

夢を見た。 不毛極まる夢である。 夢の中、私は慣れ親しんだ自宅のシンクに突っ立って、ひたすら洗い物に勤しんでいた。 山積する汚れた食器を、無用な水道代が嵩まぬように効率を心がけつつ雪いでゆく。 ところがこれはどうしたことか、泡を落として水切り…

夢路紀行抄 ―車中談議―

夢を見た。 車の中の夢である。 ふと気が付くと友人の運転する車の助手席、そこに座って雑談に興じる私が居たのだ。 車内にはラジオも音楽もかかっておらず、ただ二人の話し声だけが響いていた。 友人は私に、多年の研究の果てに見出したという真理について…