穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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夢路紀行抄 ─解体新書─


 気色の悪い夢を見た。


 ジャーナリストの身となって、イスラム過激派のテロリストに突撃独占インタビューする夢である。


 褐色の皮膚に短く刈った毛髪に、油断なく光る大きな目。如何にも砂漠の戦士でございと言わんばかりの風貌と、机を挟んで向き合っている。猛獣の檻に閉じ込められたと錯覚する迫力だった。事実、殺人経験は豊富であるに違いない。部屋の隅には年代物のラジオがあって、垂れ流されるエキゾチックな音楽が、我と我が身の緊張をますますひどいものにした。


 こっちのそうしたテンパり具合を見透かしてのことだろう、男はことさら露悪的にふるまった。やたらと巨大な口径の銃をチラつかせたりと、暴力を誇示する方向で。

 

 

(『サイバーパンク2077』より)

 


 そのうちそいつは何処からともなくゾンビを一匹、連れて来て、驚く私の目の前で解体作業を開始したからたまらない。


 ナイフをくるくる器用に使い、腐りかけのその皮膚を、ビニールみたく容易く剥ぎ取り臓器を露出させてゆく。「ゾンビになって相当経つから脂肪が少ない」とか何とか解説を挟まれたような気がする。正直、悲鳴を上げたかったが、下手に制止しようものなら今度はナイフの切っ先がこっちに向けられないとも知れぬ。


 ここでは生命いのちの保証など、最初はなから存在しないのだ。


 なるたけ心を空にして事が去るのを待つより他に、打つ手は皆無といっていい。お蔭で地獄の鬼のみが無感動にこなせるだろう手練手管をじっくり見せつけられてしまった。

 

 

(『Ghostwire: Tokyo』より)

 


 これほどまでにむごったらしい悪夢は久方ぶりである。


 朝の出だしは最悪で、ついに一日、低調だった。


 何故こんな目に遭ったのが、いったいどんな体験が夢の苗床になったのか。


 考えてみて、差し当たり思い浮かぶのは、

 


「自分が宜昌へ行った時、呉光新の部下の将校三十余名がストライキをしたと聞いた、将校のストライキとは珍中の珍なので、一人のストライキ将校に其の理由を訊くと、理由は由で、頗る簡単である、曰く『戦線に出て居る将校は、大尉で八十ドル貰ふ、我々も大尉であるのに、後方に居るとの理由から三十ドルしか呉れぬ、それで同志三十名は職を辞した』
 上の好む所、下是より甚しで、上、将軍、将校已に然り、下、兵卒の之れに倣ふは無理ではない。
 北軍を通じて、兵士が外出に際しては決して銃は勿論帯剣さへ許されぬ。それは若し銃や剣を持たして外出さすと、直ぐ売り払って、又別の隊の新兵を志願するからである

 


 寝る前の読書に含まれていた、斯かる一節あたりだろうか?


 書き手の名前は竹内克巳。


 世間には専ら満洲日報の記者として名前の知れた人物である。

 

 

Yichang 009

Wikipediaより、宜昌市街)

 


 軽く流し読んだだけでも大阪府警の離職事情を彷彿せずにはいられない、暗澹たる気分に導く、そんな内容。


 その暗がりが意識の底から更に碌でもないモノを呼び起こしてしまったか。


 もうちょっと陽性な情報を、今夜は脳に詰め込もう。

 

 

 

 

 


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