穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

※当ブログの記事には広告・プロモーションが含まれます

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

漢民族の言行不一致 ―支那に幻滅した尾崎―

以下はちょっと信じ難いような話だが。―― 清朝末期、全国二十三ヶ所に設置された税関は、途方もない運営方針に打って出た。支那人の雇用拒否である。 自国の行政機構から自国民を叩き出し、態々高いカネを払って西洋人を招聘し、業務を遂行させていた。 これ…

兵が畑で採れる国 ―李氏朝鮮の「拉夫」事情―

兵隊の数が足りなくなると、そのあたりの人夫を拉致して形ばかりの軍装をさせ、兎にも角にも体裁の弥縫に腐心するのは、なるほど宗主国様とそっくりだ。 李氏朝鮮のことである。 東学党の乱、またの名を甲午農民戦争が勃発した当初の話だ。朝廷はその保有す…

ソヴィエト謹製・催眠音声 ―生命涵養法の一―

もしかすると催眠音声作品の「始祖」を見つけたやもしれぬ。 精神科医にして文筆家、式場隆三郎の著作に、だ。 昭和十二年刊行、『絶対安眠法』の中に於ける一節である。 映画の与へる強い視覚作用と、トーキー応用による聴覚作用を併せて、治療に役立てよう…

実験動物怪奇譚 ―脳がなくとも生きてやる―

一九三六年、アメリカのとある医学雑誌にとんでもない実験論文が載せられた。 タイトルは「正常鳥類と大脳摘出鳥類に於ける睡眠及び覚醒の記録」。 鳥類とあるが、より詳しくは鳩を用いた研究である。 (Wikipediaより、カワラバト) 手順はこうだ。まず正常…

煙突なき街、山口市 ―「近代産業に見捨てられた地」―

明治維新から半世紀。山口市は、近代産業に見捨てられた街の謂(いい)を甘受していた。 人口、僅かに三万三千。大都会岡山の十三万はもとより、同時期の鳥取と較べてさえも六千人ほど少ないという寂寞さ。 (山口市米屋町本通り) 「工場」と呼べる施設など…

庚申川柳私的撰集 ―「不祥の子」にさせぬべく―

「きのと うし」「ひのえ とら」「ひのと う」「つちのえ たつ」「つちのと み」――。 あるいは漢字で、あるいは仮名で。カレンダーの数字のそばに、小さく書かれた幾文字か。 古き時代の暦の名残り。十干十二支の組み合わせは、実に多くの迷信を生んだ。 (W…

江戸の当時の蕩児たち ―『色道禁秘抄』を繙いて―

玉鎮丹、如意丹、人馬丹、陰陽丹、士腎丹、蝋丸、長命丸、鸞命丹、地黄丹、帆柱丸。 以上掲げた名前はすべて、江戸時代に製造・販売・流通していた春薬である。 左様、春薬。 現代的な呼び方に敢えて変換するならば、媚薬とか催淫剤とかいったあたりが相応し…

男装の麗人、その魅力 ―HENTAI文化は江戸以来―

文政九年のことである。 江戸は上野の山下で、世にも珍奇な見世物が興行される運びとなった。 女力士と盲力士の対決である。 互いに十一人の選手を出して、最終的な勝ち星を争う。 (Wikipediaより、土俵) 土俵の神聖もへったくれもない話だが、実のところ…

正月惚けの治療薬 ―川柳渉猟私的撰集―

思考がどこか惚けている。 正月気分で緩んだネジが、未だに二つか三つほど、締まりきっていない感じだ。 しゃちほこばった文章は、角膜の上をつるつる滑って逃げてゆく。 こういう時には川柳がいい。 するりと脳に浸潤し、複雑な皴を無理なく伸ばす。そうい…

本間雅晴、アフガンを説く ―九十年の時を超え―

アリストテレスはいみじくも言った。 未来を見透したいのなら、過去を深く学ぶべし、と。 政体循環論の如き、悠久の時のスケールで人間世界を貫く哲理を求めんとしたこの男らしい口吻である。 幸いに、と言っていいのか。 過去を知るのは大好きだ。 大日本帝…