2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧
馬鹿な模倣者もいたものだ。 大正五年十月十二日、神奈川県の東南部、藤沢町は若尾銀行前の踏切にて自殺があった。まだ若そうな兄ちゃんが、線路に飛び込み殺到してくる列車に轢かれ、鉄道往生一丁あがりと相成ったという次第(ワケ)である。 (Wikipediaよ…
英国人が考えた。 そうだ、ゲジラ地方を灌漑しよう。 スーダンの地図を眺めながら考えた。 (ゲジラ(ジャジーラ)州位置) 青ナイルと白ナイル、双(ふた)つの大河に挟み込まれたあの場所は、現在でこそ一面不毛の砂漠なれども、手を加えれば見違えるほど…
こんな年(とし)も珍しい。 一九二四年は選挙の「当たり年」だった。 日独英仏それぞれに於ける総選挙、かてて加えて合衆国の上下両院、大統領選。およそ「列強」と呼ばれるに足る諸国の内の大半で、政治の舵を誰が取るのかを決める、このイベントが開催さ…
あるいはボトラーの先祖と呼べるか。 戦前、すなわち帝国時代の日本に、便所に行くため席を立つのを億劫がったやつが居た。 職場にて、のお話である。 それも尋常一様の職場ではない。 「お役所」だ。 こやつの勤め先たるや、なんとなんとの中央官庁、当時に…
お前コレ、半ばトランス状態で、感極まった勢いのまま一気呵成に書いたろう──。 そう突っ込みたくなる文章に、時たま出逢うことがある。 直近では高村光太郎にこれを見た。 然り、高村。 日本国で義務教育を受けた者なら、おそらく一度は彼の詩を朗読したに…
相性が悪い。 「農家」と「自由貿易」とは、だ。 不倶戴天にすら近い。 自由貿易に反対するのが本邦農家の半分以上、伝統のようになっている。 伝統、そうだ、伝統だ。百年をゆう(・・)に遡る大正時代のむかしから、既に斯かる傾向が立派に表出しているの…
落第回避の口上ひとつをとってさえ、日本人と支那人との間には差異天淵もただならざるものがある。 前者がもっぱら教授の膝下に額づいて、自家の窮乏を涙ながらに物語り、如何に余儀なき哀しい事情が試験に於ける不成績の裏側に伏在せるかを掻き口説き──ひと…
水に惹かれる。 水に慕い寄ってゆく。 (どうも、おれには) そういう性質(サガ)があるようだ──と、西国分寺駅改札を潜りながら考えた。 (Wikipediaより、西国分寺駅) ここから歩いて五分ちょい、お鷹の道・真姿の池湧水群を眺めに行くのが目的だ。 「我…
犬なら平均三十八日、 豚では平均三十四日、 猪ならば二十日間、 兎十五日、 モルモット八日、 たった三日の白ネズミ。 ──以上の数値はその動物が断食を強制されたとき、すなわち水だけで何日生存可能かを取りまとめたるモノである。 (モルモット) 高比良…
白秋は努力の信者であった。 練習の礼讃者であった。 「継続は力なり」を真理と仰いで微塵の疑念も差し挟まない男であった。 と言うよりも、日夜努力を継続し、綴方の修錬を積んでいなくば不安と恐怖で精神を狂わせかねないやつだった。 ──何に対して。 との…
ヒトラー・ユーゲント来朝の際、すなわち昭和十三年。このアーリア人種の選りすぐり、俊英三十名たちは到着早々、大和島根の最高峰を極めんと──富士登山に挑戦している。 試み自体は成功裡に終始した。 未来のドイツを、否、欧州を背負って立たんと気概に燃…
うどんやそうめん(・・・・)あたりでは、ちょっとこういう情景は成立するとは思えない。 昭和二年も残すところ五十日を切るか切らないかといった、十一月十日の話。東京府庁に「そば職人」を名乗る壮漢三名が突如押し掛け、知事に面会を求めるという椿事が…
神戸牛の擁護者にして礼讃者。 三井王国の柱石が一、「大番頭」益田孝なる御仁には、そういう側面(かお)をもどうやら併せ持っていた。 (Wikipediaより、益田孝) 該ブランドにどれほど激しく心を寄せていたものか、端的に示すエピソードとして、次の如き…
どうも酒屋のせがれ(・・・)が多い。 わたしが好む詩人には、だ。春月しかり、白秋しかり、彼らはいずれも、憂いを払う玉箒の製造を生業とする家の出身なのである。 特に後者に至っては本人自身酒好きで、酒がテーマの随筆なんぞも、探せばいくらか見出せ…