夢を見た。
迂闊千万な夢である。
駅へと向かう道すがら、私のアタマに唐突に、ずっと昔に借りたまま部屋の隅っこに転がしっぱなしのDVDが浮かんだのである。
(しまった)
あわてて引っ返すことにした。
が、先刻通過した際には影も形もなかった筈の抗議デモ隊が道を塞いで、容易に通行を許さない。
何に対して抗議していたかは不明だが、やたらと平均年齢が高かったことと、
「あなたも実は老人なのかもしれませんよ」
と声をかけられ、人体解剖図がデカデカと載ったビラを渡されたことだけは憶えている。
やがて、自宅に着いた。
さして手間をかけることなく、ちょっと家探しするだけで、目的の物は発見できた。積み上げられた本の合間に、埃を被って挟まっている。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が混ざっていたのは憶えているが、他の作品は曖昧だ。レシートを検めると、返却期限、「6月6日」――。
(なんということだ)
我ながらあさましいまでの動揺だった。
夢の中では、ときに判断基準が滅茶苦茶に狂う。ひどく大袈裟な例えになるが、現実世界で親友を見殺しにしたとしても、あれほどの罪悪感を抱くかどうか。心臓が冷え、呼吸は浅く、力が抜けて腰に胴がめり込みかけた。
とまれ、どの程度の延滞料を店に支払う破目になるのか確かめねばならないだろう。スマホを取り出し、検索しようと試みるも、何故か上手く文字を打てない。
苛立ちを募らせている間に目が覚めた。「期限」というものに自分が如何に神経質か、思い知らせてくれる夢だった。
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