穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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夢路紀行抄 ―八重鳥居―


 夢を見た。


 石畳をゆく夢である。


 おそらくは御影石であろう。幾何学的な美しさを以って敷き詰められたその上を、一歩一歩地面の堅さを確かめるような足取りで行く。


 道の先には古色蒼然とした鳥居があった。

 

 

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 大鳥居といっていい。


 その気になればバスでもトラックでも悠々迎え入れられそうなその物体は、古木を伐って組み合わせたきり、彩色も何も施していないまことに簡素なつくりであって、それが逆に森厳たる霊威を放射するのに大きく寄与しているようだった。


 苔が、木肌のかなりの部分を覆っている。


 これだけでも奇観とするには十分なのに、更に度肝を抜かれたことにはこの鳥居、まったく同じ構造体が上に向って幾つも幾つも積み重なってる。


 数えたわけではないからはっきりとは言い切れないが、たぶん八つはあったのではなかろうか。天に向かって層々と延びる大鳥居。まさしく夢でしか有り得ない光景だ。


 しかもそのところどころには弓兵が配置されていて、こちらに矢を射掛けてくるからたまらない。


 このあたり、どう考えても『GHOST OF TSUSHIMA』の影響だろう。

 

 

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 かれこれ15時間ほど遊んだが、未だに一向「飽き」が来ない。剣戟の楽しさ、風景の美しさ、物語の構成等々、どれをとっても一級品で、よくぞここまで完成度の高いものをと膝を打って讃えたくなる、文句なしの傑作だ。


 現在は三度笠をいなせに被り、風来のシレンみたような格好で紅葉の間を逍遥している。

 

 

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 いつまでもここに居たくなる、この雰囲気づくりの巧みさときたらどうであろう。日本の文化というものを、その底に流るる精神まで、しっかりと汲み取り作品づくりに反映させる、製作陣の力量よ。


 その昔、テトリスにハマっていた時期などは、夢の中でも落下してくる多種多様なブロックを組み合わせるのに躍起になっていたものだが、あのころの情熱が少し取り戻された感がある。

 

 

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 閑話休題


 話を、夢の続きに戻そう。


 降りそそぐ矢の雨をどうにかこうにか掻い潜り、鳥居の向こう、鬱蒼と茂る鎮守の森へと侵入すると、ほどなくして足元の藪が騒がしくなり、子熊がいっぴき飛び出した。


 それを見て、私はまったく戦慄した。子熊がいるということは、近くに親熊もいるということ。幼子持つ身の気性の荒さは言わずもがな、ぐずぐずしてれば喰い殺される――そう判断し、私は急いでその場を離れた。


 結果的に、この選択が功を奏す。


 肩越しに背後を見てみれば、さっきまで私が居た場所のすぐそばに、焦げ茶色の毛皮を纏った大熊がむっくりと四つ脚を着いており、敵意と警戒を籠めた眼でこちらに視線を向けていた。


 そのあたりで目が覚めた。寝床から這い出してから、あの社の祭神は何だったのだろうと、そんなことが気になった。

 

 

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