2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧
類焼の危険は常にある。 大陸に戦雲みなぎれば、その影響は間髪入れず島国日本に波及せずにはいられない。 アヘン戦争がいい例だ。あれで日本の知識層らは外夷のおそるべきを知り、危機意識を過剰なまでに膨れあがらせ爆裂させて半狂乱の態をなし、ところ構…
南阿戦争の期間中、英軍は補給に一計を案じた。 真空乾燥器の活用である。 蔬菜類をこの機械にぶち込んで、水分という水分を除去、体積の大幅な縮小と長期保存に便ならしめた代物を、前線めがけてどっと送り込んだのだ。 (Wikipediaより、ボーア戦争) 今で…
大東亜戦争の真っ只中に陸軍将校が書いた本を読んでいる。 昭和十七年、大場弥平著『われ等の新兵器』が、すなわちそれ(・・)だ。 表紙を捲ってものの十秒、早くも序文の段階で、 「竹槍」 の二文字が目に入り、わけもなく苦笑させられた。 (Wikipediaよ…
「勝浦郡生比奈村星谷には岩窟の中に仏像の彫ってある星の窟といふがあり、昔、星が隕(お)ちたのを此の岩で掩ふたのである」――。 前回に引き続き、加藤咄堂『日本風俗志』よりの抜粋である。 語感から何から、脳を震わせてくれること、抜群な話ではないか…
四国は高知県内の良心市の習俗は、昭和どころか大正中期の段階で、既に評判になっている。 左様、良心市。 無人販売所と言い換えてもよい。 (Wikipediaより、良心市) 掘っ立て小屋の屋根の下、籠なり笊なり何なりに野菜や果実を盛り上げて、手書きの値札と…
躊躇していたネタを書く。 迂闊に触れると妙な団体を刺激しそうで「壺」に封印していたのだが、客観視するとどうだろう、そういう自分が如何にもなにか物に怯えて縮こまっているようで、薄みっともなく姑息でまた情けなく、真夏の暑さも手伝って、積もり積も…
毎年八月晩夏のみぎりに達すると、南部盛岡城下の街は俄かに騒がしさを増して、士農工商のべつなく誰も彼もが気忙しそうに動き出す。 江戸から客が来るためだ。 「将軍家用馬買上」のため、白河関をくぐり抜け、日本列島の上半身をはるばると、公儀役人の一…
詩歌の蓄積が相当量に及びつつある。 ここらでまとめて放出したいが、なにぶん折からの猛暑であろう、見事に脳が茹だりはじめた。 頭蓋の中で創意が融ける音がする。 お蔭でロクな前口上も浮かばない。エエイまだるっこしい、こんなところで何時までも足止め…
北米大陸を視察して、増田義一がしみじみ感じた必要性は、一刻も早く日本のあらゆる店舗から、「いらっしゃいませ」と「何をお求めですか」とを分離せねばならないということだった。 アメリカでも店に入ると「いらっしゃいませ」が飛んでくる。 しかし九分…
平山蘆江が日本婦人の襟足讃美を展開すると、高田義一郎がこれに和し、水着に於けるチラリズムとセクシー主義の相克を力いっぱい物語る。 いきなりなんだ、と思われるかも知れないが。昭和十六年という日米大戦の瀬戸際で、本邦有数の文化人らが実際に演じた…
そのころ官途に在る者の威勢ときたら馬鹿々々しいまでであり、鼻息だけでどんな巨漢も吹き飛びそうで、維新政府の殿堂は、一朝にして天狗の巣穴と化した観すら確かにあったといっていい。 わけても明治十六年、県令として石川県に繰り込んできた男など、その…
グラッドストンは意志の強い男であった。 一度正しいと信じたことは決して曲げない。全国民から反対意見を突き付けられても、あくまで初志を貫き通す、孤軍奮闘をものともしない勇猛心の持ち主だった。 (Wikipediaより、グラッドストン) ――自我のみを愛し…
「戦場での猪武者が、政治の庭では豚野郎に堕しおった」 九郎判官義経という国民的偶像を、ここまで情け容赦なくこき下ろすやつも珍しい。 三宅雪嶺、昭和十四年の言だった。 (Wikipediaより、三宅雪嶺) 「あいつはいったい、何をメソメソ、腰越状なぞ書い…