夢を見た。
とち狂った夢である。
むろん、まわし一丁の姿で、だ。
神聖な土俵にあがる以上、当然の仕儀といっていい。
ただ、どういうわけかカチューシャと人民帽だけは、それぞれ被ったままだった。
私は行司役として、その取り組みをいちばん近くで見届ける栄誉に与っていた。
恐悦至極、望外の歓喜としか言い様がない。
飛び散る汗、紅潮する肌。裂ける天に震える地。
実力は割と伯仲していた。
人と
まあ、夢の話だ。整合性を求めるだけ野暮だろう。
決着の前に目を覚ましてしまったゆえに、どちらが勝ったかは分からない。
とうとう頭がイカレたかと自分自身に辟易しつつ、目覚まし時計を引き寄せる。
設定した時刻まで、まだ三時間以上の猶予があった。
起床するには早すぎたのだ。目を閉じ、意識を手放して――私は再び、夢を見た。
今度のは、砂の国の夢である。
(『アサシンクリード オデッセイ』より、小エジプトの風景)
ピラミッドが建っていた。
現実のそれとは大きく異なり、全面化粧石に覆われて、白堊にまばゆく輝いていたのは『アサシンクリード オリジン』による影響だろう。
その足元では、異変が進行中だった。
とんでもない数のようがんまじん――左様、『ドラクエ』シリーズお馴染みの、手と顔だけを地面から露出させたあのモンスター――が寄り集まって、基底部を融かさんとしているのである。
その情景を認めた瞬間、私は恐怖にすくみ上った。
自分でも、何があんなに恐ろしかったかわからない。意味不明の衝動だった。脊髄をゴボウさながらに引っこ抜かれて、氷水に浸け込まれでもしたかの如き戦慄だけが確かであった。
その印象があまりに強烈すぎたゆえ、あとの記憶はバラバラである。ピラミッドの中に入って、土産物屋で財布を開けたら三千円しか入っていなくて気まずい思いを味わったとか、病院を思わせる通路の先で誰かと会った気もするが、いずれも千切れ千切れの断片に過ぎず、どういう順序だったかも今となっては曖昧だ。
目覚めてから暫くは、脳がスポンジにでも
――いっそのこと、二度寝などせず。
実際問題、後味の良否を論ずるならば、そちらの方が遙かに上等だったろう。
(Wikipediaより、土俵)
すぐに眠り直したところで、夢の続きに飛び込めるとは限らない。ときにはまるで別種の演目が上映されることもある。
貴重な教訓を手に入れたとでも考えようか。
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