穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧

同時代評 ─小作争議篇─

群集心理は恐ろしい。 小作争議が激化して紛糾に紛糾を重ねると、「多数派」かつ「攻め手」たる小作側から急速に良心とか節度とか、分別とか見境とか、世間普通の水準で「正気」に属するあらゆるモノが消えてゆく。 我が意を通し勝利に至る為ならば、どんな…

新参神格「孫逸仙」

今更敢えて鹿爪らしく言うまでもない事実だが、人間は死後、神になり得る。 遺された者、弔う者らが死者を神座へ押し上げる。 大変な作業だ、人手は多ければ多いほどいい。 徳川家康が大権現に、 豊臣秀吉が大明神に、 菅原道真が天神様に、 それぞれ祭りあ…

工匪跳梁、大陸赤化プレリュード

軍閥打倒・支那統一の方便として、孫逸仙は赤色ロシアと手を組んだ。 モスクワが、コミンテルンがこの繋がりにどれほど執心していたか。ものの数年を出でずして送られて来た「顧問」の数が物語る。 軍事、教育、政務等々、各方面に合わせて二百人超だ。二百…

美しき封建律

人を殺ったら鉱山(ヤマ)に逃げ込め。 腕に覚えのある技師にとり、鉱山(ヤマ)は格好の逃避先、奉行所の詮索も届かない、藩邸同様ある種の治外法権だ。──… 江戸徳川の世に於いて、異常な速度で発達を遂げ来たった観念である。 山の腸(はらわた)、暗くう…

勝つまで止めぬ ─共に地獄に堕ちてでも─

交戦一年を経たあたりから、帝政ドイツの外交態度は新傾向を帯びてきた。 講和への熱烈な欲求である。 ベルギー、ロシアは元よりとして、大日本帝国に対してまでも単独講和の打診があった。むろん、悉くを撥ねつけられた、実のならぬ花に過ぎないが、あった…

木堂むかしがたり

あくまで犬養木堂の主観に基く印象である。 統計学的根拠ゼロ、およそ「正確な記録」とはとても呼べない代物ではあるものの、それでも当時の世相の一部を写し取ってはいるだろう。 ──文明開化の掛け声も初々しかった明治前期の日本で。 記者たらんとの志望に…

外交官と宣教師 ─明治の苦労人たちよ─

森有礼が駐米外交官として精力的に活動していた時期と云うから、つまりは明治四、五年あたりのことだろう。 (Wikipediaより、森有礼) 筋金入りの開明主義で鳴らしたこの人物は、しかし一日(いちじつ)、ともすれば、自分以上の熱量を宿した者に遭遇し、狼…

出稼ぎ目障りお断り

一九二四年、連邦議会に提出された排日移民法案を、「新聞王」ウィリアム・ランドルフ・ハーストは徹底的に首肯した。 彼のビジョンは米国が、少なくとも濠洲と同程度の有色人種排斥国と化するところにこそ在った。 (Wikipediaより、ハースト) これは誇張…

共和国に死の香り

占領からものの三ヶ月内外で、五十人もの死者が出た。 一九二三年、フランス・ベルギー軍によるルール占領を言っている。 同年四月十日に於けるヴィルヘルム・クーノの演説内容に則る限り、どうもそういうことになる。ワイマール共和国の首相閣下は、その日…

たまには明るい話を ─五月病の予防薬─

蛙鳴蝉噪、野次が飛ぶ、足踏みをする卓を拳固でぶっ叩く、挙句の果てには互いに胸倉掴み合い、柔道の技を競い合う。 「これが仮にも文明国の議会かね」 とは、大日本帝国の衆議院を見学した人々の、一様に浮かべる嘲笑だった。 多少なりとも表現力に自信のあ…

一流の条件

国の印象──。 大日本帝国の視点から遠望したアルゼンチンは先ず以って、「イギリスの食糧庫」程度に過ぎず。 反対に、アルゼンチンから眺めた場合の大日本帝国のイメージは、「ロシアを打ち負かした国」が、その殆んどを占めるであろう。 更に言を重ねれば、…

出戻り御免 ─戦後恐慌と公務員─

警官ばかりに限らない。 大戦景気に浮かされて、公僕たる身に飽き足らず、濡れ手で粟を掴むべく、実業界──野に下った連中は教職中にも多かった。 (満洲にて、粟の穂叩き) こういう場合、数字は何より雄弁だ。実に大正八年度には六百人以上もの中等教諭が不…

プリンストン夜話

学校でも、職場でも。 日本だろうと、アメリカだろうと。 時代を問わず、国境を超え。 古顔による新参いびりは人間社会につきものだ。ニュージャージーの名門校、プリンストン大学に新たに入学(はい)った若者は、先輩たちからいのいち(・・・・)に、腐っ…