穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

すべてを焼き尽くす暴力

楽な戦(いくさ)と思われた。 英国陸軍司令部は、そのように政府に請け負った。「完全な軍団が一つ、騎兵師団が一つ、騎乗歩兵が一個大隊、それに輜重兵が四個大隊」、南アフリカにはそれで十分。ボーア人どもを薙ぎ倒すには、その程度の戦力投入で事足りる…

南ア残酷ものがたり

開拓作業の第一歩。――未開蛮地に文明人が勢力を新たに張るにつき、自然力を減殺するのは常道だ。 必須条件ですらある。原生林には火を放ち、人や家畜を害し得る猛獣類は殺戮するべきだろう。 (仏軍の火炎放射器攻撃) 日本人も北海道でやっている。明治の初…

ホルモン黎明

「臓物あります」の貼紙をつけた食堂がこのころめっきり増えてきた。 註文すれば、豚や牛の内臓を調理したのが皿に載ってやって来る。 (『アサシンクリード オデッセイ』より) 見た目のグロさにちょっと逃げ出したくなるが、エエイ日本男児であろう、剣林…

死が死を誘う

地球に熔けると表現すれば、まあまあ聞こえは良かろうが――。 マグマを慕って自由落下に身を委(まか)す、火口投身の試みは三原山の独占物でないらしい。 阿蘇山もまた、その舞台に使われた。か細いながら、それは確かにあったのだ。 明治三十九年に渋川玄耳…

人類の友、汝の名は犬である

忠犬ハチ公の芳名はまったく世界的である。 この風潮は昨日今日誕生したのにあらずして、戦前昭和、彼の秋田犬の存命時よりそう(・・)だった。 何日、何週、何ヶ月、何年だろうと主人の帰りをじっと待つ、けなげで一途な有り様はひとり大和民族のみならず…

エイジはどこだ ―小説家と挿絵画家―

「最後の回が出来ました」 すわりきった眼差しで、開口一番、吉川英治が言ったセリフがそれだった。 (Wikipediaより、吉川英治) 場所は岩田専太郎の仕事場である。岩田は当時、挿絵画家として吉川英治の新聞連載小説にあでやかな華を添えるべく、彩管の技…

発気用意 ―江見水蔭の土俵入り―

江見水蔭には妙な私有物がある。 土俵である。 彼は庭の一角に、手製の土俵を設(しつら)えていた。それも屋根付き、雨天でも取っ組み合えるよう、とある知人の船主から古帆をわざわざ貰い受け、そいつを改良、覆い代わりにひっ被せていたそうな。 仲間内で…

野心の炎に焼け爛れ

人は米寿を超えてなお、――老いさらばえて皮膚は枯れ、頭に霜を戴くどころか不毛の曠野を晒す破目になってなお、野心に狂えるものなのか? むろん、是である。 是であることが証明された。姓は中本、名は栄作。数えで九十一歳になる、大じじいの手によって――…

死んでも売らぬ

商用で、あるいは研修で。 理由は個々でまちまちだ。が、とまれかくまれ、第一次世界大戦勃発の秋(とき)、国外に身を置いていた日本人は数多い。 早稲田大学に至っては、危うくその学長を異郷に失うところであった。 高田早苗を言っている。大正三年四月か…

派手に狂った方が勝つ

密告社会の基本はつまり「闇から闇へ」だ。良き釣り人ほど気配を殺すのが上手く、必要以上に水面を揺らさず、鼓動さえも慎んで、獲物(サカナ)を欺き、正体を悟らしめぬ如く。 大衆という、ニトロ以上に爆発しやすい液体に波紋を生じさせぬまま、「問題」だ…

夢路紀行抄 ―冷蔵庫と氷壁と―

夢を見た。 とっちらかった夢である。 思い起こせる限りに於いて、始まりはそう、冷蔵庫を診察しているところから。私は耳に聴診器を装備して、あの先端の丸くなってる例の部分を冷蔵庫の扉へと、細心の注意を払いながら押し当てて、微かな異音も聞き逃すま…

In The Myth,God Is Force.

セオドア・ルーズヴェルトは快男児である。 グレート・ホワイト・フリートに、ひいては棍棒外交に象徴されるが如きまま、その政治上の遣り口は徹頭徹尾「力の信徒」そのものだ。本人もそれを自覚して、理解(わか)った上で金輪際隠さない。むしろ全身で誇示…

潮のまにまに

活動弁士は日本のオリジナルである。 (Wikipediaより、長谷川利行『二人の活弁の男』) トーキーが世に出るより以前、映画といえば声無しに定(き)まっていた黎明期。銀幕に映る情景がいったい何を意味するか、舞台袖に陣取って、一生懸命解説するを事とす…

そして亡国へ

目を疑うとはこのことか。 どうしてこんな光景が成立するのか理解できない。 いわゆる人民戦線がフランスの牛耳をとっちまって(・・・・・・)いた時分。我が世の春を謳歌しまくるアカどもはパリの街路を勝手に占拠、検問を据え、通りすがりの市民から「カ…