穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

※当ブログの記事には広告・プロモーションが含まれます

2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧

一寸先は常に闇

初期も初期の報道(しらせ)では、甲府もついでに壊滅したとされていた。 江ノ島が沈んじまっただの、富士が崩れ落ちただの。 大正十二年九月一日の大震災は、地震というより天地創造の再開として海外諸国に伝えられた感がある。 (Wikipediaより、関東大震…

治にあって乱を忘れず

特別な意志は介在しない。 そこに雑誌があったから、ただなんとなく手を伸ばし、開いただけのことである。 場所はドイツのミュンヘンである。たまたま入ったカフェである。前の客が置いていったか、それとも店がサービスとして提供していた代物か。とまれ小…

魔都よりの帰還

「支那全体に、恋愛は三組以上あるだらうかと思ったのは果して僕だけの感想であらうか。文化が四千年も連続すると、その種族の肉体の細胞は、恋愛を要求する必要がなくなって来るのに相違ない。しかし、肉体が、何故に肉体であるかを證明するためには、飽く…

極東にロマンを託して

ハワイ在住、デヴォン氏はとんだ奇士だった。 東洋趣味が骨髄にまで徹しきった人物なのだ。 殊に極東、日本の文化に対する憧憬、凄まじく。ホノルル市の郊外に、私費を投じて純和風の公園を開設せしめたほどである。 (Wikipediaより、ホノルル) 「…入口に…

生き血をすすってそそり立つ

世の中は、何かにつけて計画通りに行かぬもの。 「どんな完璧な計画も、実行に移した瞬間から崩れ始める」。これは戦場の霧の中から紡ぎ出された文句だが、平時の社会生活上にもある程度、応用できぬこともない。 浅草名物「十二階」こと凌雲閣も、その成立…

都市伝説と時代相

冥界に放送局でも建ったのか。 ある時刻、ある周波数に合わせると、ラジオはにわかにスピーカーから幽霊の声を垂れ流す、呪詛の媒介機と化する──。 戦前の都市伝説だった。 霊の棲み処も時代に合わせて徐々にハイカラになるものだ。平成の御代、「呪いのビデ…

吉野博士が推す男女

「男ならば三宅雪嶺、女ならば羽仁もと子」。 並居る先達諸士の中、時勢の指導者格として相応なのを選ぶなら、まずこの二人になるだろう──。 吉野作造の、かつて語ったところであった。 (Wikipediaより、吉野作造) 彼の言葉はここから更に、「当節は刺戟の…

ゲルマン魂涵養所

帝政時代のドイツに於いて、大学生とは一種特権階級だった。 「学問の自由」の金看板をいいことに、彼らはときに国家の法の支配からさえ逸脱せんと試みた。 無法者を気取ろうというのではない。 社会的動物の一員として、むろん秩序は尊重している。尊重する…

War Never Changes

ずっと危惧され続けたことだ。 「太平洋の両岸に根を蔓延らせる二大国。旭日旗と星条旗、日本国とアメリカは、結局のところいつか一戦交えぬ限りとてもおさまりっこない、激突を宿命づけられた関係なのではあるまいか?」 昭和どころか大正以前、明治四十年…

坊主も詩人も誰も彼も

まさに総力戦である。 僧侶も、文士も戦場へ征き、敵陣めがけて弾丸(タマ)を撃ち、盛んに殺し・殺されをした。 一次大戦下に於けるフランスの事情を述べている。開戦のベルが打ち鳴らされてものの一年を経ぬうちに、聖職者の身で銃を執り、法服を戎衣に改…

男らしさと瘦せ我慢

人は一生、見栄を張る。 特に男は痩せ我慢の度合いを以って「男らしさ」のバロメーターにすらアテる。 予防接種で、あるいは虫歯治療の場に臨み、迫る注射の針先や、近付くドリルにしかし怯えをあらわさず、悲鳴を上げることもなく、涙なんぞに至っては一滴…

水晶の国

水晶は、甲州人が他国に誇れる稀少なる名産品の一である。 江戸天保の昔時には、なんと全長一尺三寸にも及ぶ極めて大きな結晶を幕府方に献じたと、そういう逸話がなおも根強く伝えられているほどだ。 一尺三寸。 身近な単位に換算すると、およそ49㎝、ほぼほ…

脱線ノスタルジー

そのころ汽車はよく落ちた。 「外れた」と換言してもいいだろう。 もちろんレールの上からだ。脱線事故を指している。大正・昭和の昔時に於いて、その種の災禍は珍しくない。我が故郷たる山梨にても、大正時代の中期(なかば)ごろ、一発大きいのがあった。 …

暑さにやられる

意識をあまり一点に集約させ過ぎるがゆえに、心ならずも演じてしまう数多の奇行。 パウル・エールリヒにはどうも、アダム・スミスの同類めいた、生活上の失格者とでも称すべき、素っ頓狂な側面が存在していたようだった。 (Wikipediaより、パウル・エールリ…

果てなく共に

君こひし寝てもさめてもくろ髪を梳きても筆の柄を眺めても 逢見ねば黄泉(よみぢ)と思ふ遠方へ宝のきみをなどやりにけん たゞ一目君見んことをいのちにて日の行くことを急ぐなりけり 思へどもわが思へどもとこしへに帰りこずやと心乱るゝ 以上はすべて与謝…

秘匿と水と

セーヌ川の水ぜんぶ抜く。 いや、厳密には悉くではないけれど、「大半」程度が関の山であるけれど──。とにもかくにも川底を容易に、大規模に、ごっそり浚い盡せるほどには流水量を減らしてしまう。 どうも、フランスの天地では、一世紀ごとに二回ほど、そう…