2026-03-01から1ヶ月間の記事一覧
実生すぎ子と同様の、大正時代の留学生で、やはり同じく祖国へと、出先の国の消息を手紙に記して送った者に、中村宗雄の存在がある。 後の早稲田の教授職、法学博士の学位に与るこの人は、大正八年七月以降、オーストリアはウィーン大学に身を置いて、智慧の…
一夜漬けの伝統は、なにも大和民族のみの専売特許と限らない。 星条旗はためく地の子弟、──合衆国の学生間にもまま(・・)見受けられる現象である。 そのころカリフォルニア州はオークランドの名門校、ミルズ・カレッジ(Mills College)に異装の生徒が在籍…
十九世紀、フランスに於ける日本人の扱いは、まるで珍獣のそれだった。 さもありなん、 「向こうの地理の教科書を開いてみて驚いた。支那の部分は大きな地面に辮髪姿のちゃんとした肖像画が添えてあるのに、日本の部分は埒もない、豆粒みたいな地面の脇に、…
あたかも江戸期の蘭学者、『ターヘル・アナトミア』翻訳中の杉田玄白一同らを見るようだ。 事実、本質はそれに似る。 ──明治九年、司法省に異動早々、清浦奎吾に下された主な任務は、治罪法の制定作業こそだった。 (『Cyberpunk 2077』より) 成立したての…
超大国の頂点という自負があるいはそうさせるのか、合衆国の大統領は時々変なことを言う。 例えばウッドロウ・ウィルソン。 (Wikipediaより、ウィルソン) 第一次世界大戦にケリをつけんと舞台に上がったこの人は、その段階でもう既に十分千両役者であった…
二十世紀の幕開けから十余年。イギリスからアメリカへ、──リヴァプールからニューヨークへの航海は、一週間かそこらにて、十分果たせられていた。 ところがいったん戦(WWⅠ)の火蓋が切られるや否や、どうだろう。要する日時はみるみる嵩み、最終的には戦前…
発足当初の陸軍衛生部隊の徽章は「横倒しにした赤の一本線」である。 石黒忠悳の発意であった。 (明治前期の石黒忠悳) 既に外遊経験者、新帰朝組のひとりとして赤十字社の活動を知り、魅せられもしていた石黒的には最初から、もうストレートに赤のクロスを…
整合性なぞ気にするな。 過去の己の言行に、今の自分の有り様が背反するのは当然だ。 だって生きてるんだから。 万物流転し絶えず変化し続ける、先行き不明な濁世の中にどっぷり浸かってるんだから。 流れに揉まれりゃ、どうしても、元のカタチは保てない。…
若し、である。 若しも三宅雪嶺にいじめ問題の対策案を訊いたなら、 ──被害者に、銃を一挺、くれてやれ。 たぶん、おそらく、こんな答えが返って来るのではないか。 それで乱射事件でも発生したなら万々歳だ。山と積まれた屍を不心得者ども(いじめっ子ら)…
味覚が消えた。 花粉症のせいである。 鼻粘膜の炎症がのっぴきならない段階へ、──ついに一線を超えたのだ。 呼吸困難に陥るほどの閉塞感が鼻腔にあって拭えない。ヤケクソ気味に思いきり鼻をかんでみたところ、鼓膜の調子もおかしくなった。顔面の穴は穴同士…
資本家は臆病ないきものだ。 暮らし向きに不自由のない、裕福な身にも拘らず、否、裕福な身であればこそ、あの手の類の連中は自身の富の損失を──財産が目減りすることを──貧乏人以上に嫌う。嫌うにも況して恐怖する。その(・・)痛点の敏感性は一般庶民の遥…
二十世紀、ヨーロッパはドイツにて、さる高名な動物学者が自殺した。 既に初老の身であって、自然の作用に任せても、まあ十年か二十年。そのあたりを出でずして死神が戸を叩きに来そうであったのに、なにゆえ態々苦しい思いをしてまでも短い寿命を更に縮める…
ある日、突然気が付いた。 自分の雅号はもしかして、他者(ひと)から誤解を受けやすい、一種不穏なニュアンスを含んでいるのでなかろうか? 荒東学人こと増田義一の胸中に、ふっと兆した疑念であった。 元を糾せば他愛ない、彼の生家の西方に流れていた河川…
感涙會の招待状を読んでいる。 鶴彦こと大倉喜八郎の名のもとに、毎年四月八日をとって──釈迦の降誕した日付、めでたきこと限りなし、問答無用の吉日である──開催(ひら)かれていた饗宴だ。 (『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』より) 花を肴に詩吟に酒に、役…