2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧
気象と相撲は取れやせぬ。 台風(かぜ)も旱天(ひでり)も、人力ではどうにもならない。 天候に恵まれない限り、作物の健全な成長なぞ金輪際不可能だ。にも拘らず、好天を引き寄せるために有効な努力は何も無い。百姓はただひたすらに、自然の前に頭を垂れ…
復讐の師が起こされた。 百三十隻以上の漁船に三十余名の海女らをも駆り催して編成された、堂々たる陣容である。 総大将は御木本幸吉。 言わずと知れたミキモトパールの創業者。 この軍勢を以ってして、真珠養殖場内に侵入(はい)り込んだタコどもを一匹残…
焼きちくわの発祥は気仙沼であると云う。 天然の良港で名の高い、東北地方のあの街だ。 明治十五年前後、当地に於いて水産物の加工業を営(や)っていた菅野留之助なる仁が創意工夫を働かせ、アブラザメの身をすりつぶし、ジャガイモと混ぜ、形を整え熱を加…
北極圏の先住民も新大陸の先住民も、白色人種を扱うに「神の出来損ない」視した。 それは現実の力では、──ごく物理的な殺戮技能、単純な戦争の強さではどうやったって白人どもに敵わぬと、吐き気がするまで徹底的に思い知らされたが故の、逃避あるいは代償行…
明治四十年前後、徳冨蘆花がこんな風に吼えていた。 「先に古人あり後に来者あり、古人と後人は我に於いて結び付けらる」 やがて来たる者たちのため、かつて来たりし者たちの千姿万態とりどりを、俺が明示し置いてやる、と。 現在を生きる我が筆で、未来の奴…
「大震災で閣僚全部がくたばった? 財界人にも被害大? それじゃあつまり俺らの時代が、想定よりもずっと早くに来るってか?!」 「こんな異国でグズグズしてはいられない。早急に帰朝しなくては。祖国の混沌を収拾し、その功績を将来の跳躍台に活かすのだ」…
人命がひとすくいの麦粉より軽く扱われる国家。 そんな国には住みたくもなし、生れたくもないものだ。 ソヴィエト時代のロシアについて言っている。 「政府は一九三二年八月二十二日附にて穀物盗難防止案を発布して、農民が耕地に於いて、又は穀物保管庫に於…
鶴見祐輔は弁達者である。 少なくとも世間の値踏みはそうだった。彼の登壇がプログラムにある演説会は、客の入りが輪をかけて素ん晴らしいと評判だった。 (viprpg『アゼクラvsクロノッポイⅢ』より) とにかく人気があったのだ。永井柳太郎と相並び、言論界…
戦争勃発と物価騰貴は合わせ物。 何故かだなどと、理由をいちいち詮索するのも億劫だ。 人間世界の、もはや公理にさえも似る。 近くはロシアのウクライナ侵攻関連(がらみ)によって散々実見させられた──否、勝手に過去形にするのはよくない、バッチリ現在進…
戦場は異常環境である。 そこでは人は、あまりに脆い。すぐに崩壊してしまう。ひとり肉体のみならず、精神面でも事情は同じ。直接弾雨を浴びずとも、悪臭、不潔、騒音に、破片と化した敵味方、五官を通じて流入し来たる四囲の情報ことごとく、心を削らぬ要素…
「未来世界の人間が、どんな姿をしているか? そりゃあ勿論みんながみんな、揃って容姿端麗で、スラリとしていて背が高く、温和で上品で愛想がよくて健康で、高い知性のきらめきを宿しているに決まってるさね。 低能児に廃疾者、遺伝病者に不細工なんぞは綺…
夢を見た。 返り討ちにする夢である。 自宅に不法侵入してきた盗人を、逸早くそれと察知して扉の陰で待ち構え、ひょいと出てきた無防備な頭部めがけて鉄パイプを振り下ろし、撃退に成功したところまでは上出来だった。 (viprpg『雷魔法が悲惨な目に遭うksg…
ロシア人というものが切羽詰まればオーデコロンを飲みはじめる民族と、酒精ならでは夜の明けぬ、ジャンキーとして格の違う生命体であるのだと日本人が知ったのは、やはりこれまた日露戦争期間中のことである。 「ペトログラードでもモスコーでも、到る処の薬…
かつて、ロシア人の眼に、瀬戸内海は「河」と映った。 明治三十七、八年役、日露戦争のさなかに生まれた、割と有名な巷説である。 投降し、捕虜となったロシア兵らを御用船にて移送中、この内海へと舳先が入りかけたとき。 彼らの一人がさも感じ入った面持ち…
あつすぎ もうだめ ばたんきゅー。 (viprpg『それでも果てるまで』より) 実際問題、真面目な話、いつまで経っても衰えぬ暑気に禍されすぎて、すべての日課に不協和音が挟まりつつある状態だ。 文章の書き方がわからなくなり、タイピングが停止して、キーボ…