穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

※当ブログの記事には広告・プロモーションが含まれます

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

躍る言ノ葉

皇国の言論界は華やかだ。 雑誌ひとつをめぐっても、蓋し百花繚乱である。 ジャーナリズムに宗教性すら見出して、新たな時代の偶像に雑誌を祀り上げんとたくらむ情熱家が居る一方で、 ──高級雑誌は大新聞のかつて犯した過ちを順調に踏襲しつつある。 由々し…

タイを釣らんが為のエビ

明治三十七年である。 日本原産の愛玩犬たる狆(ちん)のオスメス番(つがい)が二組、インド洋を経由して、欧州世界へ送られた。 高橋是清の要請である。 時の英国王妃たるアレクサンドラ・オブ・デンマークへ献上するため、言葉通りの「おくりもの」であっ…

地下水摂氏13℃

ふとしたことから安曇野を歩く機会に恵まれた。 「日本のパミール高原」とも称される、長野県の特殊な地形。そこの中部に相当する彼の街で、特に観光(み)るべき名所といえば何を措いてもいのいち(・・・・)に、大王わさび農園に指を屈さねばならぬであろ…

丹波栗とボタン鍋

丹波は栗の美味い土地。 その美味い栗をたらふく喰って育つから、必然としてイノシシもまた美味くなる。 雪がちらちら丹波の宿に、 シシがとびこむぼたんなべ と、地元の謡──デカンショ節──にある通り、旬に突っつくボタン肉は絶品で、その名声はひとり国人…

腐肉生肉ノベリスト

ある童話作家が言っていた。 文学者としての自分なんざァ、しょせん市場の腐肉売りも同然よ、と。 (『プレイグ テイル -レクイエム-』より) 最初(ハナ)からそんなヤクザな仕事をしたかったのでは、むろんない。 清冽な希望に燃えていた若々しい時期とて…

Ghost of Tokachi

猛獣は日本国にも棲んでいる。 熊である。あの毛むくじゃら且つ筋肉質な食肉類との付き合いは、屡々悩みの種である。奴らときたら人がせっかく手塩にかけた家畜を襲うし畑も荒らす、なんなら財産のみならず、いとも容易く我々の生命さえも脅かす。まったく以…

食肉はいやだ ─高度経済成長期篇─

トラクターを先鋒に農村にまで機械力が浸透すれば、割を食うのは動物力だ。 何百年、否、ことによると千年以上の昔から「生きた耕耘機」として田に畑に労働した馬たちは、もはや「用済み」の烙印を押され、食肉用に文字通り解体される憂き目に遭った。 (『…

一日四度の入浴を

宇垣一成の好きなもの。 乗馬に読書、そして風呂。 特に三つ目、風呂に対する耽溺ぶりは、源さん家の静香ちゃんも顔負けである。なんといってもこの男、一日四度の入浴を習慣化してのけている。 (Wikipediaより、宇垣一成) 長岡温泉の別荘に静養中の事情(…

偶然の詩

「君去って我が外交を如何せん」 明治三十年八月二十四日、陸奥宗光、永眠す。 その報せを得るや否、黒田清隆の肺腑より絞り出された慟哭である。 「我が」とはむろん、日本帝国そのものを指していたに違いない。 (Wikipediaより、陸奥宗光) 川柳になって…

益軒流読書術

どうも貝原益軒は、書見に臨む態度に於いて筆者(わたし)と同種、僭越ながら仲間意識を持っていい、「先達者」であるらしい。 彼もまた、実に多くを抜き書いた。 読書中、視線を紙上にさまよわせるうち、特に秀逸なアイディアや、論旨の要点、あるいはいっ…

ミネラルウォーター無尽蔵

秦野、日野と同様に、昭島(あきしま)もまた豊富(ゆたか)なる地下水有す街である。 どれだけ豊富かというと、そのあたりの適当な蛇口のどれを捻っても、ミネラルウォーターが出てくると評判される程度には──。 耳を疑う話だが、まんざら訛伝とも呼べぬ。 …

変態建築リスペクト

「文明レベルを測る指標は、機械化の進捗なんかじゃあなく、自然に対する崇敬心の多寡ですよ──」 熱っぽく語る異邦人。 遠くアメリカ、シカゴから、遥々日本の山峡(やまあい)の田舎町まで行脚してくるだけあって、酔狂というか、物好きというか、一風変わ…

秋への扉

文士・上司小剣は、少年時代のいずこかで、松尾芭蕉に強烈に焦がれた時期があるそうな。 ──おれも、大人になったなら。 芭蕉の如き旅から旅の、放浪者の境涯に我と我が身を放り込んでみたいもの、と。漠然とした夢模様を秘めながら、妙な「遊び」に盛んに耽…

偶像破壊本格派

宗教はアヘンなり。 アヘンは宜しく焼き棄てられよ。あんな毒物、ほんの一片たりとても、地上に留めてはならぬ。 まさかそこまで乱雑な動因からではなかろうが。──とまれかくまれ成立したてのソ連にて、宗教弾圧の凶風がカテゴリー5もかくやとばかりに荒れ狂…

グレート・マザー

死ぬるより殺さるゝより嘆かるは都の母の今朝の悲しみ こんな一首を残して死んだ日本人がかつて居た。 彼の名前は柄本富一。 殺人罪で死刑判決を受けた男だ。 (viprpg『やみっちホーム』より) 極悪人の辞世の句といっていい。 公判中、被害者遺族に謝罪も…