穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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地下水摂氏13℃


 ふとしたことから安曇野を歩く機会に恵まれた。

 

 

 


「日本のパミール高原とも称される、長野県の特殊な地形。そこの中部に相当する彼の街で、特に観光るべき名所といえば何を措いてもいのいち・・・・に、大王わさび農園に指を屈さねばならぬであろう。

 

 

 


 極めて豊富ゆたかな湧水は、北アルプスの降雪という最上級の逸品を供給源に仰ぐモノ。その利を遺憾なく活用し、栽培されるわさびの量は年間およそ九十トンにも及ぶとか。

 

 

 


 西湖いやしの里根場にもわさび田の施設は存在したが、とても比較になり得ない。規模に於いて遥か比較を絶していると、入園早々、痛烈に思い知らされた。

 

 

 

 


 一日平均十二万トンの湧き水は、一年を通して十三℃前後に保たれている。わさびという植物は、清冽な流れの中でしか良好な発育を望めない。そうした観点からいって、ここの環境はまさに理想的だろう。

 

 

 


 せせらぎに心洗われる。


「森が断ゆれば自ずと水が涸るゝであらう。
 水の無い自然、想ふだも耐へ難いことだ。
 水はまったく自然の間に流るゝ血管である。これあって初めて自然が活きて来る、野に山に魂が動いて来る──若山牧水の詠嘆を想起せずにはいられない。


 水資源の潤沢な国土に生まれた喜びを、ひしひし感ずるばかりなり。

 

 

 


 しつこい残暑も漸く去って、陽射しもどこか柔らかく、──出歩くに格好の季節となった。


 秋枯れの景色は美しい。四季のもっとも見ごたえのある面とさえもいっていい。可能な限り享楽したい、味わいたいものである。

 

 

 

 

 


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