穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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職業に貴賎なし ─市井に紛れる「えらいひと」─


 木村儀作新帰朝者だ。


 知見を広げるためならば、言語の壁もなんのその。海の向こうに刺戟を求め、遥か異郷へ船出して、求める「何か」を彼の地で得ると、やがて再び帰り来た。


 後には医学の分野に於いて博士号まで取得する、そういう木村の洋行みやげ噺の中に、

 


欧洲殊に英国では、相当の前官者が退官後、極めて低い職席に就いてをる。軍人出身者は門衛に、会社官庁に努めてゐたか、船長だった様な人は博物館の監視人をするとか、警視だった人が、百貨店の見張番になったりしてをる

 


 こんな一節が見出せる。

 

 

(英国、リヴァプールの埠頭)

 


 本当ならば──あくまで真実とすれば、だが──まこと愉快で有益な気風といっていいだろう。


「職業に貴賎なし」の精神を徹底させるため、「他山の石」とするに足る。天下りの楽園と化して久しい現代日本にとっては特に、確実に。

 

 

「凡そ人生には自主自由の権あり、上は王公貴人富豪大家より下は匹夫匹婦の貧賤に至るまで、智愚強弱幸不幸の別はあれども、名誉生命財産私有の権利は正しく同一様にして、富貴巨万の財産も乞食の嚢中にある一文の銭も、共に其人に属する私有にして之を犯すべからず。生命も斯の如し、名誉も斯の如し」

 


 イギリス流の自由主義に親炙した福澤諭吉の言葉と併せて、そうだ今こそ、亀鑑と仰ぐ価値がある。

 

 

(バッキンガム宮殿前)

 


 ──ひょっとすると。

 

 こういう気風が伝統として織り込まれている社会背景ありきなら、元特殊部隊の凄腕がうらぶれた建設現場に潜り込み、辛うじて口に糊をしている状況も、あながち絵空でもないか?


 意識の端を、愚にもつかない考えがふっとかすめていったのは、年末年始を利用してジェイソン・ステイサム主演無双映画を片っ端から視聴まくっていた所為だろう。

 

 とんだところに、とんだ経歴の人材が紛れて居すぎなのである、彼が看板の作品は──。

 

 

 

 

 


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