穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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Return to normalcy


 筆者わたしの中でハーディングが、今、熱い。


 左様、ウォレン・ハーディング


 第二十九代アメリカ合衆国大統領


 共和党所属。


 魅力的な人物だ。

 

 

Warren G Harding-Harris & Ewing

Wikipediaより、ハーディング)

 


 彼の演説、あるいは談話を発掘すればするほどに、否が応にも興奮募り、体温上昇、脈拍加速を自覚せずにはいられない。


 例えばコレなどどうだろう。

 


「今や軍備制限説は漸次世界に蔓延しつつあり、されども地球上の他の諸国が悉くその武器を地に委するまで、我が米国は、国防の第一線として、世界最大の海軍の支持を持続せざるべからず

 


 実に素敵なセリフであった。


 第一次世界大戦終結後、払った犠牲の夥しさに胆を潰した各国は、かかる惨事を二度と繰り返してはならないと、軍縮を口々に唱えはじめた。――少なくとも表向きの名目は、そんな調子で以ってして。


 平和維持の美名の下に滔々として世界を覆う軍縮ムード。時代の流れとも言える、圧倒的な勢いに、しかしハーディングは屈しない。合衆国の軍事優越を犠牲にしての平和なぞ真っ平御免と、敢然として立ち向かう。


 雄々しさの化身ではないか。まるで軍神アレスのようだ。「強いアメリカ」憧憬あこがれるヤンキーどもの魂をガッチリ掴んだことだろう。

 

 

(『Call of Duty: WWII』より)

 


アメリカはその建国より今日に至るまで、圧迫せられたる世界各国民及び自由を憧憬する人々の避難所たりき、吾人は広く門戸を開放して世界各国人に自由に我が国に入り、米国内に於いて十分なる機会と、政治的自由の享有を許したり。
 然れども今や我が国の発展は、遂に、特に機会享有の許可を与へられるべき人々にのみ、入国を許すを必要とすべき時代に到達せり

 


 民選を白昼堂々、どストレートに宣言している点も良い。


 ステレオタイプ万歳だ。こうでなければ共和党に身を置いている意味がない。

 


吾人は何人がこの国に入り、我等の活動に参与すべきか将たすべからざるかを決定するに十分なる道徳と自然と国際法の権利を有す、吾人は我が共和国内に於いて人々が厳正なる米国人としての精神を発達せしむべき必要を新たに認識せるを以って、之を適応すべく、移民法を改正し、国際的の諒解を求めて我が国に移住せんとする他国人に斯かる政策を適用すべきを周知せしめ、外国出生者が単に米国市民として同化するのみならず、全然米国の経済及社会の標準に合致し以って一意専心米国の習俗習慣及び理想に一致せしむる如く努力せしむるを要す

 


 郷に入っては郷に従え、アメリカ人にならない奴は、アメリカには不必要。


 蓋し真っ当な要求である。


 一世紀後の今日こんにちだろうと亀鑑として仰ぎ得る、まさに金科玉条だ。

 

 

(大統領執務室)

 


 ……まあ、この場合、米国人になりきれぬとして真っ先に指弾されたのは、他ならぬ我々大和民族、日本人であるのだが。


 早い話が排日移民法なのだ。ハーディングの就任前後は西海岸一帯で、日本人問題が過去最高に熱っぽく論議されていた時代。当時コロンビア大学に在籍していた小橋三四子の通信上にも、その影響がもうありありと見て取れる。

 


「…学校で私は新聞科以外、社会学のコースを取って居りますが、その講義にはアメリカの移民問題を随分根強く論じて居ります、そしてアメリカの人口は今や移民によって変態に発展して居る、従って国利民福を妨げられる事が多いのは大いに考慮を要すると申して居ります、かういふ事を聞くと排日も決して政略上の一時的現象では無く、もっと根深い原因から出て居ると考へなければなりません。…(中略)…次の火曜は大統領選挙の日です。四年に一度のこの光景を見得る機会に遇った事を喜んで居ります」

 

 

 末尾に於いて認められた、「次の火曜の大統領選」。


 これに勝利を占めたのが、すなわちハーディングであった。

 

 

ホワイトハウス

 


 しかしどちらの候補者も、排日移民ムーブメントに賛意を示した一点は、大差なかった――「ある州が其の地理的形勢及び内的状態に鑑み、アジア人排斥政策及び之に準拠して発表せられた諸法律を施行せんとするに対し、民主党は之に援助を与る事を誓ふ」(ジェイムズ・コックス、サンフランシスコにて)――ようである。


 そうしなければ選挙に落ちてしまう以上は是非もなし。


 もっともハーディングの場合、まったくきっぱり根っからの信念よりの雄叫びとして、上の如きを呼号していたがあるが。


 なればこそ四対一という、ほとんど歴史に特筆すべき、圧倒的な大差で以って勝ちを収められたのだろう。

 

 

ElectoralCollege1920

Wikipediaより、1920年大統領選)

 


 アドレナリンを迸らせてくれる野郎だ、本当に。

 

 

 

 

 


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