移民が増えれば犯罪も増す。
両者はまさに正比例の関係にある。
アタリマエのお話だ。
一世紀前、この論法に疑義を呈する白人は、ほとんど絶無に近かった。「自由の国」の金看板を衒いもせずにぶちあげる、アメリカとてもその辺の事情はまったく同じ。揺るぎなき金科玉条として、日本移民排斥の十八番としたものだ。
(いわゆる「日系二世」たち)
なんといってもスタンフォード大学の名誉総長サマまでが滔々として述べている、
「アジアから群がり来る大勢の移民を歓迎する事は米国に取っては政治的に好ましからざる事である、…(中略)…人種が
と。
個々の資質の良否なぞ、およそ二の次、三の次。
肌が白くない、黄色い肌の日本人であること自体が、つまり問題の根幹であり、騒動を惹起する元凶である。存在自体が駄目なのだ、と。デイヴィッド・スター・ジョーダンによる、実にありがたいお言葉だった。
それが今ではどうだろう、上の如きをニューヨークの十字路で白昼堂々公言すれば、たちまちのうちに「レイシストのクソ野郎」と認定されて罵られ、袋叩きの目に遭うことに相違ない。
いやはや変われば変わるもの。
「米国の自由の精神なるものが種々変る。時には帝国主義めく時もある。世界に対しお山の大将めく時もある。所謂人道主義めく時もある。若し本当に自由の女神をして米国を象徴させる気ならせめて手は握っただけにして捧げるものを自由に取換へられるようにするがいい」
岡本一平の観察は、蓋し急所を射貫いていたと感心せずにはいられない。
一世紀中に風向きはまるきり逆転したわけだ。
では、次の一世紀先は、果たしてどうなる?
岡本一平の毒筆をして、
――記念像なぞといふものは気取った嘘を形に作り上げるまでのものだ。
斯く言わしめた女神像の手にはいったい百年後、何が握られているだろう?
(岡本一平によるスケッチ)
握る握らない以前の問題、核爆発を至近に受けて、とっくにこの地上から消滅している可能性とて、あながち無きにしもあらず。昨今の世界情勢は、それほど差し迫っている。これを書いている間にも、合衆国の裏庭あたりが騒がしい。大使館の治外法権が正面から無視されて、ために国交断絶相次ぐと、冗談みたいな報道が飛び込んでくるザマだから。
未来予測の絵模様は、どうにもこうにも薄暗い。
慄然たるべき危うさだ。
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