夢を見た。
『カイジ』シリーズの登場人物、黒崎義裕――帝愛グループ№2のあの男と餃子を喰う夢である。
種類は典型的な水餃子で、皮越しにうっすら透けて見えるニラの青さがあざやかだった。
そしてその、餃子を口に運ぶ合間合間に黒崎義裕が語るのである。
内容は、ギャンブルが如何に愚かなものか。
なんでも人生を丸ごと
カイジ君は相変わらず危ない橋を渡り続けているようだが、君、あれは感心せんよ――と、例の如く堀内賢雄のあの厚みのあるいい声で説いていた。
かと思いきや次の瞬間、急に場面が切り替わり、私は学生時代の友人二人と肩を並べてソファーに腰掛け、熊みたく大柄なロシア人を向こうに回して必死の交渉を行っていた。
彼の持つ「何か」をどうしても手に入れなければならなかった筈であるが、それが具体的に何なのかはもはや朧だ。
大汗をかき熱弁する我々に、巨漢は黙ってアルミのコップを差し出した。その簡素なデザインは、キャンプにでも持って行けば如何にも映えそうなものであり、しかし持ち主のサイズに合わせたらしく極めて大きい。
中には暗褐色の液体が、これまたなみなみと注がれている。鼻をさす強烈な刺激臭がその正体を告げていた。
酒である。
それも馬鹿みたく度の強い。
まずはこれを呑み干してからでなければ、どんな交渉も受け付けない。それが礼儀と、ロシア人の深い瞳が言っていた。
私の右隣に座っていた男が最初に呑んだ。が、少ない。総量の五分の一も減っていない。
――頼りにならない奴め。
心中密かに毒づきながら、渡されたコップをええいままよと思い切って傾けた。
液体は妙に生温かく、澄んだ見かけからは想像もつかない、異様な粘性を持っていた。それが私の口の中に充満する、あの不快感ときたらない。
粘膜を蹂躙された、という表現がいちばんしっくりくるだろう。
コップを取り落としそうになるのを辛うじて堪え、最後の一人、私から見て左隣の奴に回したところで目が覚めた。
アラームのセットしてある時刻までまだだいぶ余裕があったが、再び夢に戻る気にはなれなかった。
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