穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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運命からの贈り物 ―「栄螺ト蛤」―

 

 予期せぬ出逢いがまた増えた。

 
 例によって例の如く、古書のページの合間から、はらりと舞い落ちて来たのである。

 

 

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 題名は「栄螺ト蛤」で、左下は「第三学年 木本リツ」と書いてあるように読めないか。


 学生の美術の課題だろうか? それにしては完成度がやたらと高い。迷いのないすっきりした筆遣いは優美の極みで、書き手の心をよく反映したものだろう。


 紙質は、その薄さといい滑らかさといい、ほとんどパラフィンを思わせる。慎重に保管しなければ。

 

 

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 半券二種。栞がわりに用いていたと思われる。

 

 

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 裏面。


 大正三年、上野公園を会場として開催された東京大正博覧会は、四ヶ月でのべ七百五十万人もの入場者を迎えたビッグイベントに他ならず、右はそのうちの一枚だろう。


 第一会場と第二会場の間には、日本で初めてエスカレーターが設置されていたそうだ。

 

 

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 新聞の切り抜き。ノースクリフ卿の支那国際管理案につき報じられているあたり、これも大正時代のものと看做してまず間違いはないだろう。

 

 

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 裏面。


 当時の所有者は、こちらを目当てに切り抜いたと思われる。


 馬上の人は、よほど高貴な御方のようだ。


 ――ひょっとして。


 皇太子時代の昭和天皇陛下ではないか。そんな想像を、ついしたくなる。古書はまったく、浪漫であろう。

 

 

 

  

 

 

 
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