穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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一日千秋・待望の時

 

 私のフロム・ソフトウェアとの付き合いは長い。高校生の頃、たまたまブックオフのゲームコーナーで『アーマード・コア3 サイレントライン』(ps2)を手に取って以来の仲である。
 まあもっとも、当時の私にはサイレントラインはあまりに難易度が高すぎて、未クリアのまま投げ出さざるを得なかったという苦い経験もあるのだが。漸く復讐を果たせたのは大学生になって後、実に3年強もの歳月を経てのことだった。


 その期間、どのようにして腕を磨いたかはひとまず措こう。


 ともあれ以来十余年、同社のソフトはほとんど欠かさずプレイして来た。
 どれもこれも一癖どころではなく個性が強くて記憶野に強烈な印象を残していった作品ばかりであるものの、中でも特に深刻な影響を私に与えてくれたのは、やはり『Bloodborne』であるだろう。

 

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 人生観すら左右したといっていい。
 私が「進化」や「宇宙」、「脳髄」といった単語にいたく浪漫を掻き立てられる体質へと変化したのは、まったく本作をプレイして以降の事なのだ。


 世界観の構築に「クトゥルフ神話」が影響するところ大である――そう知るや否や居ても立ってもいられなくなり、『ラヴクラフト全集』を求めに走った。

 

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 とあるエンディングの元ネタが『幼年期の終り』と云う古典SFの大作と知ると、直ちにそれを買い求め、読み進めるうちに今度はアーサー・C・クラークの虜となり、彼の作品を鵜の目鷹の目で漁りはじめた。

 

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 いやさまったく、クラークの発想には幾度息を呑まされたかわからない。特に『太陽の中から』という、『天の向こう側』に収録されている短編を読んだ際には、この男の脳細胞はいったいどんな配列をしていたんだと畏怖に似たものさえ味わった。


 きっと、思考の瞳がダース単位で蠢いていたに違いない。そうでもなければ恒星内に棲息する生命体なぞ、発想すら叶うものか。

 

 生命とは、組織されたエネルギーにほかならないのではないか? そのエネルギーがどんな形態をとろうが、それが問題だろうか――地球で知られているような化学的なものであろうが、ここに存在しているように見えるまったくの電気的なものであろうが。パターンだけが重要なのだ。物質そのものに重要性はない。(『太陽の中から』)

 

 啓蒙を注ぎ込まれる感覚とはこういうものかと、しみじみ思ったものである。
R-TYPE TACTICS II -Operation BITTER CHOCOLATE-』のラスボスも、ここに着想を得たのではないかと私はひそかに推察している。

 


 ――その、フロム・ソフトウェアの新作が。

 


 私の人生に斯くも深甚なる影響を及ぼしてやまないフロム・ソフトウェアの新作が、発売までもう48時間を切っている。
 言わずと知れた、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のことである。

 

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4

 

 
 焦がれに焦がれて、私はもう頭がおかしくなりそうだ。この時をどれほど待ち望んだか。
 まさに垂涎三千尺、ゲームソフトにここまで期待を煽られたのは、果たして何年ぶりであろう。


 よって22日以降、暫くの間当ブログの更新が滞ることになるであろうが、どうかご寛恕願いたい。文章に取り組もうにも『隻狼』に後ろ髪を引かれる力が強すぎて、とても意味のある何かを書ける予感がしないのだ。
 全力を攻略に注ぎ込みたい。脇目も振らず、全力で。殺し殺されまた殺されて、血反吐を吐いてのたうち回る、あの死闘感を思う存分堪能したくてたまらないのだ。
 勝手ながら、どうかご理解下さいますよう、重ねて願い奉る。
 

狼よ はやく我が家に 来ておくれ

 

 

 


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