夢を見た。
死人が動いて死人を増やす、所謂バイオハザードチックな夢である。
グロテスクだが、しかしそれ以上の問題は、私がその病原菌を売り捌いて金を得る、所謂元凶的立ち位置に居たことだろう。
さりとて断言しておきたいのは、あの日、あの街で発生したバイオハザードに、私は一切関与していなかったということだ。
自分が何を扱っているかの自覚はあった。
だからこそ「品質」には徹底的に拘り抜き、管理にも万全の注意を払っていたのだ。それが思わぬ功を奏して、業界での私の人気は高かった。嫌な人気ではあるけれど。
ゆえに地獄と急速に融合しつつある街の姿を見下ろしたとき、心に浮かんだ感情は憤りに他ならなかった。いったい何処の間抜け野郎がこんなヘマをやらかしたんだ、と。
とまれ業界人であるだけに、この先の展開は分かりきっている。政府は躊躇いなく「最終的解決案」を実行するに違いない。とっとと逃げなければ我が身も危険と判断し、取り引き前の「商品」が入ったアタッシュケースを引っ掴み、ホテルの部屋から出たところで目が覚めた。
何と表現すべきか、そう、映画の冒頭30分だけを見せられて、突然劇場から叩き出された気分である。
あそこからが面白くなってくるところだろうに。不完全燃焼もいいところだ。
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