夢を見た。
二度寝の合間の夢である。
一度は目を覚ましたにも拘らず、寒さと惰性に押し切られ、再び布団にもぐり込んだ私の意識はあっという間に夢の中へと旅立った。
その世界の情景は、現実世界の私の部屋とほとんど何も変わらない。机には炬燵布団が被せられ、窓からは燦々と陽ざしが差し込んでいる。
主だった差異はただ一つ。ぜんぜん見覚えのない白髪あたまの老人が本棚の前に陣取って、詰め込まれた古書の背表紙をじろじろ眺めていたことだ。
夢の中特有の茫洋とした気分も相俟って、私はこの事態にどう処せばいいのかさっぱりわからず、声をかけることも出来ぬまま、阿呆の如く呆然と老爺の背中を見詰めるばかり。この寒いにも拘らず、彼は着流しの甚平一丁という、ひどく季節外れな格好をしていた。
やがてこちらに向き直った老人は、どっかりと床に腰を下ろして胡坐をかいて、私の眼窩に棒の如く一直線な視線を注ぎ、
「よくぞこれだけ集めたもんだ」
そう言って、鷹のように鋭い笑みを浮かべたのである。
私が蒐集した古書の中には書き込みや、朱線・青線が引かれているのも珍しくなく、著者直々に贈呈されたと思しき書籍さえも存在している。
特別な想いが籠められていたとしてもなんら不思議ではないだろう。そうした前所有者たちの念が凝って、あのような形を成したのだろうか。
だとすれば、私はたぶん、
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