2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧
大正後期、安価なるアメリカ製の木材が、怒涛の如く日本国へ押し寄せた。 数字に徴して明らかである。 大正九年はものの八十七万石に過ぎなかった代物が、 翌十年には一躍して三百三十六万石、四倍弱を記録しており、 大正十一年ともなると、七月末で既にも…
将軍職を息子に譲り、駿府に退いた家康は、隠棲するなり居城の門の開閉に口やかましい規則をつけた。 曰く、夜間の開閉は、如何な理由があろうとも一切罷りならぬなり、と。 この新法で迷惑したのが村越茂助だ。 (Wikipediaより、駿府城巽櫓) 茂助、ある日…
明治・大正の日本にも、動物愛護の動きはあった。 特に高名な旗頭として、松井茂・小河滋次郎の両法学士が挙げられる。 わけても前者は「動物を虐待して平然たる者は人間に対しても残虐を敢えてして平然たる者」「動物虐待を見過ごす社会は問題児を大量生産…
大正時代の人間が、いったいどうして、どうやって、どんな経路でこんな知識を仕入れたのだろう。 度々思うが、今回のはひとしお(・・・・)である。 クスリに関することどもだ。 もちろん「麻」のつく方である。 柴田桂太が書いていた、ベニテングダケでト…
明治の終わりも近いころ。東京高等師範学校附属小学校尋常科にて、とある教師が生徒の知識を試すべく、こんな問いを投げかけた。 曰く、 「地球上で一番大きな魚は何か、諸君は答えられるかね」 たちまち挙手するやつがいる。 指名されるなり黄色い声を張り…
困った。 何も浮かばない。 文章の書き方そのものを忘れてしまったかのようだ。 くしゃみと一緒にありとあらゆるアイディアが、飛沫(しぶき)となって排出された感がある。 花粉の迷惑、極まれり。もはや立派な公害である。解決のため、官民挙げてもっと真…
夢を見た。 想定外な夢である。 『涼宮ハルヒ』シリーズの主要登場人物二名、キョンと朝比奈みくるとが、何故か結婚し、子供をこさえ、その成長した長男が鶴屋さんの娘相手にラブコメってる――まあ、大筋はこんな具合いか。 自分の無意識を問い詰めたくなった…
水戸学はまったく過激一途だ。 掘り下げれば掘り下げるほど、この連中には話が通じぬ――「勤王の志士」を言葉によって説得するなど芋を鰻に変化(かえ)る以上に不可能なこと、夢物語の類であるに違いないとの認識ばかりが深化する。 碩学として聞こえの高い…
いったん海に出た以上、手ぶらじゃ港にゃ戻れねえ――。 額の上にねじり鉢巻きでも結んでそうな、そういう頑固な漁師気質は、どうも日本の独占物ではないらしい。 アメリカでもそうだった。 少なくとも十九世紀、ニューイングランドの諸港に集った、捕鯨船団の…
富に対する、まるで猛火のような情熱、人の欲念の果てしも(・・・・)なさ(・・)を感じたければ、十九世紀アラスカの方を視ればいい。 一八六八年――この「冷蔵庫」を合衆国が買収したつぎのとし。ヤンキーどもは早速やった(・・・)。プリビロフ諸島に乗…
タタールのくびきが叩き込まれるより以前。キエフこそがロシア民族――スラブ人らの本拠であった。 九、十、十一の約三世紀の期間に亙りこの街は、奴隷の国外輸出によって経済上の繁栄を得た。 人を攫って売り飛ばすのが、彼らの主要産業(・・)だった。 (Wi…