思考がどこか惚けている。
正月気分で緩んだネジが、未だに二つか三つほど、締まりきっていない感じだ。
しゃちほこばった文章は、角膜の上をつるつる滑って逃げてゆく。
こういう時には川柳がいい。
するりと脳に浸潤し、複雑な皴を無理なく伸ばす。そういう効果をもっている。
現に私はそのようにして、その心地を味わった。
で、久々の渉猟の成果というか、特に効験があったのを以下に陳列させてもらおう。
四面四角と揶揄されがちな日本人の、貴重なユーモアの精髄である。楽しんでいただければ幸いだ。
朝めしを 母の
まさしく帰省中の私である。
滞在中、ついに一度も、母より先に寝床から這い出すことは叶わなかった。
これ以外にも、
母親は 息子の嘘を 足してやり
賽銭を 別に母親 足してやり
身につまされる句は多い。
(Wikipediaより、一般的な賽銭箱)
近所には ゐるなと母は 三両かし
守るべきは世間体。
なんという世知辛さであるだろう。人情の限界を見る思いだ。
母親は すぐせんぶりを 飲めと云ふ
せんぶり、どくだみ、げんのしょうこ。
田舎の古老は、だいたいこの三つのどれかを勧めてくる。
もう父に 猪口をさゝれる 年になり
大あくび 棚のお神酒を 見つけ出し
足音に 銚子をかくす けちな酒
女房の 留守もなかなか おつなもの
現在・過去・未来を貫く真理であろう。
かといって、ずっと留守にされてもそれはそれで困るわけだが。
あくまでも「息抜き」の範疇に収まってくれ。横着なれど、これまた変わらぬ願いであろう。
お袋の やうだとかげで けちをつけ
『Gears of War』にもこんなセリフがあった気がする。
若旦那 向ふまかせの 利子で借り
坊ちゃん育ちの甘っちょろさよ。
こんな奴を放置してみよ、遠からず家財を蕩尽し、先祖の霊を哭かせよう。
だから、
若旦那 みんなで賢い ものにする
こういう措置が必要になる。
(『絵本江戸風俗往来』より、油屋)
コリャだまれ 月見が家で なぜ出来ぬ
月見にかこつけ、色街に繰り出そうとしたのであろう。
捕まえたのは女房か、それとも彼の母親か。女性なのはほぼほぼ間違いなさそうだ。
身上の かたぶくまでの 月を見る
こちらはどうも、脱出に成功したらしい。
傾城に 女房面談 する気なり
容易ならぬ修羅場の気配。
姑の 日向ぼっこは 内を向き
順をよく 死ぬのを姑 くやしがり
姑の 気に入る嫁は 世が早し
嫁姑戦争の熾烈さよ。
胸ぐらの 外に女房は 手を知らず
あの女房 すんでに俺が もつところ
女房は そばから医者へ いひつける
「ああやっぱり、この人ったらいくら私が言ってやっても悪い癖が抜けないんですから、自業自得ですよ私があんなに止めたのに、この前だって――」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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