造り過ぎた。
無限の需要を当て込んで国家の持ち得る生産力のあらん限りを発動させた、その結果。
第一次世界大戦後のアメリカは、げに恐るべき「船余り」に苦しめられる目に遭った。
サンフランシスコに、シアトルに、タコマに、ポートランドに、それから勿論ニューヨーク。――北米大陸東西沿岸、ありとあらゆる港湾に、
当時アメリカを旅行した日本人のほとんどが、およそこの種の豪華なる「船の寿司詰め」状態を目の当たりにして驚倒し、その感情の振幅を紀行文に
有名どころを挙げるなら、漫画家・岡本一平の『紙上世界一周漫画漫遊』が、まずまず妥当であったろう。
「ユニオン・レーキといふ湖水に戦時に造り不要になった六千噸以上の大船が四十三艘も置きっぱなしになってる。当時造船費三十六万弗かかったものが今は二千弗でも買ひ手が無いといふ。…(中略)…『一つ日本へ買って帰ろうかしら』然し再考に及べば廻漕費が幾十倍つくか判らぬので『マアよしにしよう』今米当局では橋の代用にしようかと詮議中の由」
舟橋、それも人類史上有数の、極めて高価な舟橋である。
これぞヤンキー気質であろう。発想の大きさ・粗雑さ共に、如何にも彼らの国民性を反映していて悪くない。
この舟橋プラン以外にも、米当局は不要船の遣り場について、珍案愚案を次々出した。
「住宅難の折柄、是は適当な場所に繋留して造作を加へた上に労働者の住宅として提供するが
と、サンフランシスコ選出の某議員が
「夫れには工作用として巨額の費用が要るので、左様なことをするよりも寧ろ太平洋の真中に曳き出して一時に火を放って焼却し炎々と燃え盛る所を活動写真に撮影してフィルムとして売却した方が遥に利益がある」
映画会社の
いよいよ以って
(『Fallout4』より)
他に『紙上世界一周漫画漫遊』の、アメリカ編で面白かった箇所はといえば、
「町裏によく太い焼木杭を看る。それに SOAP と英語が書いてあるので何か由緒でもあるかと字引を引いたらつまらぬ。石鹸の広告さ。そしてこの焼木杭は町を開く為め焼払った跡だとは大木をむざむざ勿体ない」
バンクーバーにて
キャピタリズムもここまで徹底したならば、一周まわって清々しさすら発生させ得るものらしい。こそこそと、目を盗むように、中途半端がいちばん駄目だ。そういうことを、星条旗は教育してくれるのだ。
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