戦前日本の学者というのは、奇人というか、どうもマッドな香りが強い。
植物園の住人ですら、四分五裂した人体のアルコール漬け標本を平気で持っていたりする。
八田三郎のことである。
(北大植物園・博物館)
北海道大学農学部附属植物園の管理者の任を、この動物学者が帯びていたころ。同地を当代の名ジャーナリスト、杉村楚人冠が取材しに来た。
そのとき「珍しい品をお見せしよう」と持ち出したのが、前述のゲテモノだったというわけである。
以下、杉村の記事をそのまま引くと、
札幌神社に詣でゝ後植物園に八田博士を訪ふ、博士は珍しいものを見すべしとて、アルコールづけの大きな瓶を持ち出す。中にチョンまげがあり、サカヤキののびた頭の皮のカケラがあり、赤ン坊の手首や足がある。その手首には木綿の筒袖の端がついてある。見ても薄気味の悪いものばかり。
博士の説明に依れば、明治十一二年の頃近所のさる家で赤ン坊の初誕生の祝宴があって、其の夜父と子と相抱いて寝てゐる処へ大熊がはひって来て、親の頭と赤ン坊を食ってしまった。それから二日経って屯田兵が打ち取った大熊の腹をさいて見たら、頭と赤ン坊の手足がそっくり出て来た。それが即ちこのアルコールづけだといふ。
斯くの如き次第であるから、まあちょっとした三毛別羆事件の景色であった。
(Wikipediaより、ヒグマ)
通信技術、記録方法の未発達により、世間に気付かれなかっただけで。こういう悲劇は古来より、ゴマンと繰り返されてきたのであろう。
北海道の自然は容赦がない。
なればこその試される大地か。
(吹雪の札幌)
人々の神経が図太くなるのも、蓋し必然。去年の今ごろ、市街地ヒグマ騒動の折、忍者だの全裸男だの、
思考がまずい方向に流れてる。
このままだと何を言い出すかわからない。
すこし短いが、ここいらあたりで切り上げさせていただこう。
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