夢を見た。
死の宣告の夢である。
月報、広告、押し花、新聞紙の切り抜き等々、購入した古書の中に「何か」が挟まっていることは、私自身多く経験したことである。
しかしながら硬貨が滑り出て来たことは、今朝の夢以外では未だない。それは床に落下して、硬質な音を響かせた。
拾い上げて調べてみると、どこの国で流通していたものであろう、くすんだ琥珀色をした正方形の金属片で、一見すると焼き過ぎたクラッカーのようにも見える。
一方の面にのみ肖像画が刻まれていて、おそらくこちらが「表」だろうとあたりをつけた。ただ、それが何者であるかについては、顔の部分だけ魚眼レンズを通して見たように奇妙にねじれて歪んでいたので到底判別はつけられなかったが。首から下は折り目正しいスーツ姿なだけ、なにやら気味が悪かった。
とまれ、貴重な古銭である。
千円で買った古書の中にこんなものが入っているとは、思わぬ儲けをしたやもしれぬ。日頃の善行の積み重ねか、とほくほく顔で街の通りを歩いていると、
「このままでは、あなたは必ず死ぬ運命にある」
横合いから出し抜けに、そんな言葉をかけられた。
しわがれてはいるものの、確かに女の声である。
驚いてそちらを振り向くと、時代錯誤なローブ姿の老婆がひとり。老婆は自分を「霊媒師」と名乗り、私が強力な死の呪いに囚われていることを告げて来た。
(そうやって金をせしめる算段だろう)
その手に乗るか、いんちき山師め。
そうやってせせら笑えていたのも最初だけ。懐に隠している例の硬貨の特徴を老婆がズバズバ言い当てて、「それが呪いの根源だ」と告げられるに至っては、
(おいおい、こいつは本物だ)
と、すっかり帽子を脱ぐ気になっていた。
どうすれば救かる、方法はあるのかと私が訊くと、老婆は重々しく頷いた。特定の場所に、特定の時刻、特定の深さの穴を掘って問題の硬貨を埋めればよい。
「ただしその様子を、一切
見られればどうなるかは、敢えて言うも愚かだろう。
まったく、趣味がとんだ災難を呼び寄せてしまった。忸怩たる思いに苛まれつつ、夏の蒸れた闇を掻き分け、私は指定された場所――故郷の山の奥深く――へと赴いた。
で、用意してきたスコップをふるい、地面を掘り進んで行ったわけだが、私が筋肉労働に勤しんでいるすぐそばで、何故か巨大なモニターが点灯しており、赤備えの甲冑武者とキングギドラが取っ組み合う映像がひっきりなしに流れているのは、全く以って閉口した。
(Wikipediaより、赤糸威赤桶側二枚胴具足)
(このあたりは、不法投棄のメッカなのか?)
そういえばあちらに横たわっている影は、業務用冷蔵庫のようにも見える。
そんなことを考えている間にモニターの中の戦局はギドラの側に大きく傾き、もはや甲冑武者のなぶり殺しといった具合になってきた。
そのあたりで目が覚めた。
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