穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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死域の立ち合い


 狼の旅は未だ途上、葦名の雪が漸く深さを増した段であるが、それでも見えてきたものがある。

 

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 真に恐ろしい時こそ前に出よ。一撃で体力の大半を吹っ飛ばされる、嵐の如き敵の猛攻のさ中へ踏み込むのは奥歯が鳴るほどおそろしいが、だからといって心が萎縮し、攻めっ気を失くせばそれこそ死だ。赤く染まった「」の一文字が画面に浮かび上がるのを、まざまざと見せつけられる破目になる。


 下手に間合いを取ろうとして後ろに退がると、逆にあの世へ直行する。『デモンズソウル』から脈々と続く要諦であるが、この原則は本作『隻狼』にも遺憾なく受け継がれているようだ。どころかその傾向は、より顕著になったといっていい。いったい何度、山内式部利勝の槍先から逃れんとして、芋の如く串刺しにされたことやら。


 むしろ追い詰められた獣による行動爆発さながらに、がむしゃらに打ちかかって行った方が不思議と救かる率が高いのだ。生き延びたくば、敢て死域に脚をとどめよ。死を直視することが、生をもぎ取る秘訣である――。


 戦闘ひとつからでさえ、ここまで考えさせてくれるゲームというのは他にない。これだけでも買った甲斐があるというもの、溜息をつきたくなるほどの出来である。

 

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 加えてマップの作り込みと漂う雰囲気の迫真ぶりはどうであろう。巧みなること、職人芸の一言に尽きるではないか。

 怨霊渦巻く地の底の底、一番深くて一番暗いその奥に、巨大な鳥居が鎮座しているのを目の当たりにした際には総毛立たずにはいられなかった。


 この先何が待ち受けているのか、いったい何を見せてくれるのか。胸の高鳴りを抑えきれない。よくぞこれほどの作品を、世に送り出してくれたものよ。

 


 さあ、今宵も思う存分、剣戟を堪能しに参ろうぞ。

 

 

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