夢を見た。
献血の影響がもろに出たに違いない、とんでもない夢である。
夢の中で私は例の寝台に横たわり、血抜きが完了するのを待っていた。
空の血液パックを入れた装置にデジタル式の大きなメーターが付いており、400からスタートした表示が1秒毎に丁度3ずつ減ってゆく。それに合わせて血液パックが膨らむのを茫洋とした意識で眺めていた。
やがて0を迎えると、カーテンの向こうから女性看護師がやって来て、装置よりパンパンになった血液パックを取り出した。
私の心に好奇の焔がゆらめいたのはこの時である。かねてより、一度でいいからアレに触ってみたい、持ってみたいと焦がれていたのだ。
すると、そんな私の熱が伝わりでもしたのだろうか――看護師は莞爾としてそれを差し出してきたのである。よろしければどうですか、なんて文句まで言い添えて。
願ってもない。むろん私は頷いた。いいんですか、ありがとうございますと礼を言い、それを両手に受け取った。
雲行きが変わったのは此処からである。私が受け取った物体は、なんと血液パックではなく心臓だった。
誰の、などとは問うだに愚かだ。改めて周囲を見回せば、既に景色は一変している。
明らかに手術室の中だった。私の胸腔はこじ開けられて、L字型の、何か金属製の器具によって固定され、すっかり中身を抜き取られている。なんとも寒々しい眺めであった。
こんな死に方は厭だなあ、と思っていると目が覚めた。献血後の飲酒が夢見にどう影響するか、まざまざと実感させられた一夜であった。
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