穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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ハイ・ボルテージ


ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON』戦闘メカACは、麻薬性の物質を燃料として駆動すると耳にした。


 なんなんだその世界観、魅力的にも程がある。昂り過ぎてどうにかなっちまいそうだ。素敵滅法界なこと、掛け値なしな舞台背景。今すぐ全てを焼き払いたくなってくる。


 ――十六世紀、新大陸にその名も高いポトシ銀山周囲では、年々夥しい数のコカのハッパが消費され、平均的な取引額は五十万ペソにも及んだそうだ。

 

 

 


 一五八三年に於いてなど、十万籠ものコカの葉が、この地で消費されている。


 ではない、である。鉱夫全員がコカに酔っ払っていたというのも、あながち誇大表現ではないだろう。


 上の数字を記録したのは、くだんのアコスタ『新大陸自然文化史』の著者である。「たとえばひとにぎりのコカだけで、時によってはほかのものをなにもたべずに二倍の行程を旅することができる、といったぐあいの効果が、実際にあるのだ」との保証までつけてくれていた。


 ことほど左様に、重労働とは、激務とは、麻薬と極めて縁深い、ある種「呼び水」的なモノ。

 

 

ポトシ銀山

 


 二十一世紀現下でも、アフリカ辺の武装組織が資金源たるダイヤモンドの採掘に、ヤクで頭を吹っ飛ばし、疲労も恐怖も無縁となった労働者の集団をこき使っていた筈だ。タイトルは生憎忘れたが、いつぞやのドキュメンタリー番組で見た。現場責任者を名乗る男がはじけんばかりの笑顔を浮かべ、


「こいつらには不死身になる薬を与えているんだ」


 とかなんとか、白い歯をみせ、さも自慢げに語っていたと記憶する。


 勢力乱立、境界犬牙錯綜し、混沌たるアフリカ情勢、彼らとしても何時までそこ・・を抑えておけるかわからぬ以上、手っ取り早く最大効率で地面を掘らせる必要性があったのではなかろうか。


「無敵の兵士」のレシピにしても同様だ。少年兵の傷口に、コカインを塗り込んでやればいい。すぐに痛みも忘れ去り、目を七色に輝かせ、「勇敢に」戦ってくれるであろう。


 ガンパウダーとの混ぜ物をスナッフィングさせるでも可。「ブラウン・ブラウン」の愛称のもと親しまれ、ロード・オブ・ウォーにも登場したブツである。「戦いの前ガキどもにこれをやると、なんだってやる」――殺し合いなど、正気でやれる仕事じゃないとよくわかる。

 

 

 


 日本軍とヒロポンの蜜月関係――ってよし、飲んでよし、つけてよし」――に関しては、敢えて此処に繰り返す必要がないほどに、膾炙されきった話であろう。


 だから視点をぐるりとまわす。


 星条旗の軍隊も、同時期やはり覚醒剤を使用していた。


 メタンフェタミンにあらずしてアンフェタミンの方ではあるが、強力な中枢興奮作用と依存性とを具備することに変わりない。脳に効く薬ブレイン・ピルとか「スーパーマンの薬」とか呼ばれ、どう控えめに見積もっても七千万錠が消費されたとのことだ。


 太平洋を挟もうが、あっちとこっちで、やってることに大した差異はないらしい。


 War Never Changes ――おっと、これは別のゲームか。

 

 

 


 こんなことを考えながら、ルビコン3を燃やす日を、八月二十五日を待っている。


 問答無用で発売日に買いに行く、おそらく今年唯一のソフトだ。そいつについて語るからには、テンションが多少おかしくなっても、どうかご寛恕召されたし。

 

 

 

 

 


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