三日前は蜘蛛だった。
あつかましくも私の部屋に侵入してきた蟲である。
日を追うごとに、明らかに大型化しているのが見て取れるだろう。このぶんだと今夜あたり何が襲って来るのやら、考えるだに物憂くなる。
蜘蛛とヤスデはその場で潰した。
てこずったのはセミである。全身あぶらぎったこの昆虫が文字通り飛び込んできやがったのは、夜半、ふとしたことからベランダに通ずる窓を開いた、一瞬の隙をついてのこと。
この点、私はまったく彼ら虫ケラどもの光に吸い寄せられるチカラの強烈さをみくびっていたとしか言いようがない。我ながら呪詛すべき迂闊さだ。
そしてセミファイナルがはじまった。
あたかも死したるが如き風情でごろりと仰向けにひっくり返っているくせに、ちょっとでも刺激を加えられるや即座に息を吹き返し、物狂いしたとしか思えない滅茶苦茶な軌道でそこいらじゅうを飛び回る、セミ特有のあの動作のことである。
実際に体験してみるとわかるが、心臓に悪いことこの上ない。
これを叩き潰すのは、流石に心理的抵抗が大き過ぎた。
やむなく厚く重ねたティッシュで以って捕まえて、窓の外に放してやることにしたのだが、ティッシュ越しにもヤツが羽を震わせている、その震動がもろに伝わってきておぞましいったらありゃしなかった。
これだから夏は嫌なのだ。カメムシ、ムカデ、蛾に蚊柱と、気味の悪い昆虫どもが時を得顔で大発生する。ああ、本当に嫌な季節だとも。
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