鳩は一般に平和の象徴と認識されるが、果たして然りか。少年時代、彼らの共喰いを見て以来、この点ずっと疑問であった。
ほんのたわむれにフライドチキンの欠片を毟って投げ与えてみたところ、あまりに良すぎる喰いつきに思わず寒気を覚えたものだ。いやまあ、フライドチキンは鶏肉だから、厳密な意味での共喰いにはあたらないのやも知れないが。とにかく強い印象を残したことは確かであった。
実際問題、鳩ほど戦争遂行に役に立った動物というのも珍しい。流石に馬には敵わずとても、犬には匹敵、あるいは凌駕するのでないか。
むろん私は
通信技術が未発達な時代にあって、遠方との連絡をつけるにこのいきものは重宝された。彼らの飛翔能力と帰巣本能の二つとは、よく人間の期待に応えた。
(Wikipediaより、日本軍の軍鳩部隊)
欧州大戦決着後、ベルギーでは勝利のための犠牲となった鳩三万羽を「名誉の戦死」と表彰し、その功績が末代まで伝わるように、首都ブリュッセルに記念碑を建て、荘重なる除幕式まで行った。
似たような話はアメリカにもある。
特に活躍した一羽を選んで「プレジデント・ウィルソン」の名を与え、やはり首府たるワシントンの一角に墓碑を建造、手厚く埋葬したという。
イギリスもまた、これに酷似した方式を採択。すなわち犠牲になった無数の中から特に一匹を選び出し、剥製処理を施して、ガラスケースに格納した後「無名戦士の墓」へ運んた。
(Wikipediaより、無名戦士の墓)
流石は紳士の国である。彼らの功に報いるに、なるほど最上の遣り口だろう。その魂は永遠に安らかな場所へ往ったと、全国民が信じたはずだ。
ワイン片手にチキンをむさぼり喰いながら、そんなことに思いを馳せた令和三年クリスマス・イヴの夜だった。
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