十徳の一つ、「毎號大家の傑作を満載するキング」そのままに。
「非常時国民大会」は少なからぬ文化人の力添えあって完成している。
それは漫画家のみならず、詩人もまた同様だ。
北原白秋、篠原春雨、土井晩翠、川路柳虹――実に豪華な顔触れである。
折角なのでめぼしい作品を幾つか撰び、ここに掲載させてもらうとしよう。
【川柳】
(谷孫六)
日本中
皆楠に
なった気で
決死隊
命を
(井上剣花坊)
【都々逸】
海の外まで桜を咲かせ
今年ゃ肩身の広い春
見たか張さん手並みのほどを
伊達にゃさゝない日本刀
(中内蝶二)
張さんとは、十中八九張学良のことだろう。
本書が出版された昭和八年、日本軍は熱河作戦の遂行により、彼の勢力を山海関の向こう側へと追っ払っている。
親は畑 打つ嫁藁を打つ
主 は御国の敵を討つ
日本可愛の一念凝って
今日も舞ひ立つ愛国旗
母の手紙を野営の月に
読めば死ねよと書いてある
(篠原春雨)
(山海関南門を攻撃する日本軍)
【謡】
奮起一番 サア この時だ、
今日のこの日は前から覚悟、
世界相手に棄て身の日本、
ヨイカナ。
奮起一番 サア この時だ、
東亜自主なる大使命、
それを果さにゃ生きられぬ、
俺もほんとに生きられぬ。
ヨイカナ。
奮起一番 サア この時だ、
吾に王道、正義の兜、
どこが敵でも銃採り立って、
召されりゃ飛んでくこの身体。
ヨイカナ。
奮起一番 サア この時だ、
うんとガッチリ覚悟を決めりゃ、
野良で働くこの身もたのし、
何か仕事に力がはいる。
ヨイカナ。
奮起一番 サア この時だ、
みんな精出せ、働き通せ、
国を富まして、力を貯めて、
矢でも鉄砲でも来いと言へ。
ヨイカナ。
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