穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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私的生田春月撰集 ―厭世・悲観・虚無 其之肆―

 

 人の一生は
 をかしなものよ、
 平地の波瀾よ、
 人のわざ
 
 ヒョイと生れたら
 もう仕方なし、
 千波萬波の
 苦が走る。
 
 やめろ、やめろよ、
 人間様を、
 やめたら人間
 何になる。
 
 佛になるか、
 神になるか。
 なんにもならぬ、
 土になる。
 (昭和六年『生田春月全集 第三巻』、245頁) 
 
 
 
 まづ、夢が死ぬ、
 ついで愛、
 のこるは枯葉、
 一抹の灰。
 
 おれは枯葉よ、
 カラカラと
 真冬の空に
 鳴つてゐる。
 
 みんな死ぬのだ
 生きものは、
 みんな灰だよ
 燃えたなら。
(同上、280頁)
 
 
 
 金のためにすべてを捧げぬものは、
 此世に用はないのだ。
 とつととくたばつちまへ。
 
 金のためにその貞操を賣らぬ女は、
 飛んでもない勘違へしてるんだ。
 とつととくたばつちまへ。
 
 金にならねば何一つしない、
 金になるなら何でもする。
 それが時代の常識だ。
 
 唯物主義だ、唯物主義だ、
 これが時代の指導精神なのだ。
 その真理のわからぬ奴は
 とつととくたばつちまへ。
(同上、475頁)
 
 
 
 おれの目的は一匹の獣を示すことだ、
 ひもじければ人のものでも食べる、
 欲しくなれば人の女も盗む、
 怒り、打合ひ、泣きわめく
 けがらはしい二本足の獣を。
 その獣の中に神を示すことだ。
 どんな高遠な哲学を説いたところで、
 胃袋と生殖器とをもつてゐるやつは、
 やつぱりただの二足獣なのだ。
 獣は獣らしく正直に、赤裸になつて、
 四つん這ひになつて、吼えながら、
 森の中へ駈け込めばいいんだ。
(同上、467頁)

 

 

 

 鴉片をのむものあり、
 ハシッシュを嗜むものあり。
 魔薬みな霊の薬、
 その味は一片の死なり。
 
 生の中に死を求めて、
 酔の中に神を求めて、
 疲れたるもの、みな薬のむ、
 世界より癒されんとして。
 (昭和六年『生田春月全集 第一巻』、422頁)

 

 

 

 

 酩酊こそ幸いなれ。結局のところ、憂世の苦を和らげてくれるのは酒である。
 

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 酒に酔いつつ、詩にも酔う。相乗効果で夢心地。
 ええじゃないか、ええじゃないか。
 好きに詠って、好きに酔え。
 

 

 

 


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