穢銀杏狐月

穢銀杏狐月

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

私的生田春月撰集 ―情熱・勇気・前進 其之壱―

 

 情熱・勇気・前進――


 これらの単語は、一見春月とは無縁に映る。
 だが春月にも、ニーチェが示した超人の姿を我と我が身に於いて実践せんと燃え立つ心があったのだ。

 

 

 

石うてば石も音する世にありて
さはいつまでかもだしたまふや
(昭和六年『生田春月全集 第二巻』、156頁)

 

 

 

わたしは燃える、燃えるだけ
わたしは燃え尽き、滅ぶのだ。
滅ぶがましよ、滅ぶを恐れ
永久に火を点じない醜さよりは。
燃えよ、燃えよ、この心、
その一瞬の火花の中に
汝の永遠は閃くのだ、
神よ、それまで消すな火を。
(昭和六年『生田春月全集 第一巻』256頁)
 
 
 
人に笑はれようが誹られようが、
歯牙にもかけないつもりだ。
これが、人間社同人の用語例に從へば、
極端に「弱気」である私の、
自分を完成して行く為めの
何よりの修養なのだ。
 
弱いといふことは罪悪だ、
弱いものはつひに自己を生きない、
いつも人の鼻息ばかり伺つて、
卑屈と生ぬるい妥協との
泥沼に喘がなければならぬ。
そのあさましさを私は余りに知りすぎてゐる。
 
人の悪意と嘲笑との中に、
自信をもつて突立つ時、
そこに男子がある。
弱いものは世間に虐げられるよりは、
むしろ自分自身によつて一層虐げられる。
そのおどおどした眼付!
何といふ醜さだらう。
私はその醜さを余りに知りすぎてゐる。
 
強くならなければならぬ、
より強く、更により強く!
砕けても岩にぶッ突かれ、
粉微塵に砕け散れ。
砕けても自分を曲げるな!
私は「弱気」のあさましい醜いこの自分を
この烈しい言葉を以て叱咤する。
もう私は人に笑はれようが誹られようが、
歯牙にもかけないつもりだ。
(同上、284頁)
 
 
 
 
 

 生田春月も男であった。
 誰よりも強烈な男たるの美意識を持ち、それに添わんと志し、ために現実の自分とのあまりのギャップに身悶えし、殊更に烈しい言葉でおのれを叱咤しなければならなかった。


 その葛藤こそ胸を打つ。美しいと心の底から喝采したい。


 人間、せめて強くあらんとする気概がなくてどうするのだ。

 

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