猫を狂わせることだけがマタタビという植物の全能力ではないらしい。
保温効果たっぷりの良質な入浴剤として、
如何にも古書でございといった、もう見るからにくたびれきったこの一書。
附録とは言い条、総ページ数は七〇〇以上にも及ぶ。もはや本紙より厚いんじゃないかというほどである。
この年の雑誌商戦は特に苛烈で、なりふり構わず各紙鎬を削り合う、その血みどろの有り様を、口さがのない文人などは、
「不景気になればなるほど厚くなるのは女給さんの白粉と雑誌の附録だ、昭和六年の正月雑誌は一冊また一冊これでもかと足つぎを重ねて、年の瀬の乗り越えにあせる。『こんなにあって五十銭』『あけてびっくりこの大附録』『スバラシイオマケ八種』『驚く驚く延長六十八尺の大絵巻』などゝあわただしい店頭に媚びてゐる」
こんな感じに、露骨に
『主婦の友』とて例には洩れず、と云うわけだろう。
(書籍発送)
中身の方に着目すると、こまごまとした看護法は当然として、「いもりの黒焼き」みたような奇抜な民間療法や、そうかと思えば当時まだまだ珍しい帝王切開体験談のようなモノまで掲載されていて、纏綿羅色、まさに古式新式の雑居状態の観があり、なかなか飽きることがない。
就中、「毛生えに効ある薬草」として栗の
「栗の毬を黒焼にし、細い粉末にしたものを胡麻油で練り混ぜて用ひれば効があります」のだそうだ。
よしんば効き目は無かろうと、激しく害をなすことも、また無さそうな智慧だった。
戸川秋骨は医学書なんぞ読まぬに越したことはない、「誰れでも神経質的に考へると、大抵万病の持主である。うまいものでも食って平気で居れば、病気は自からなくなってしまふものであらう」とのたまうが。
美容・健康・長寿にかける人の執念。その痕跡を辿るのは、なかなかどうして面白い、魅力たっぷりな趣味なのだ。
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