自分の「爪」がのびるのを止められる人間がいるのだろうか?
いない…
誰も「爪」をのびるのを止めることができないように…
持って生まれた「
……………
どうしようもない…
困ったものだ
天与の好悪、性癖に関するこの哲学に、満腔の賛意を示したとみて相違ない。
というのも、シャルル=ピエール・ボードレール、この象徴派の先駆者たるフランス人も、その個性的な趣味嗜好を満たすため、世間の常軌をときに大きく逸したからだ。
一例を挙げよう。
ボードレールはどういうわけだかガラスの砕ける音というのが大好きで、それ聴きたさに植木鉢をむんずと掴み、適当な店の窓に向かって放り投げたことがある。むろん、一切の断りを入れないままに、だ。
もっとも断りを入れようにも、「おたくの窓の割り心地がよさそうなので、ひとつ割らせちゃくれませんかね」などと頼んで首を縦に振ってくれる有徳者――いや、数寄者と呼ぶべきか?――が、滅多にいるとは思えぬが。
下手をせずとも不審者か、さもなければ脅迫として警察を呼ばれる憂き目に遭おう。
どうせ「権力の犬」に追われるならば、思う存分
そういえば近頃のカラスは太陽光パネルに石を落として割って遊ぶものと聞く。
ボードレールにはカラスの性があったのか。
また、ボードレールは目も眩むような美女に向かって、
「あなたが天井からぶら下がっているところを見たい」
と、不可思議千万な口説き文句を並べ立てたこともある。
これはなにも「輝くような美女」をして、そのまぶしさを一個の電球に
谷崎潤一郎、――短編小説「富美子の足」でみずからのフェチズムを大爆発させたあの文豪のご同類と看做してしまって構うまい。
まったく男というやつは、いつの時代も、どこの国でも。こいつらの墓前にライザリン・シュタウトのフィギアを添えてやりたい気分だ。
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