穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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悪夢到来

 

 目を開き、枕から離れた瞬間異変を感じた。


 頭が痛い。


 鉄のたがでも嵌められて、きりきりと締め上げられているかのような痛みが走る。


 さてこそコロナか、インフルか――と嫌な想像が駆け巡り、大いに背筋を冷たくさせたが、そう間を置かずに違うと分かった。


 目が痒く、涙が溢れ、鼻水が溜まり、とどめに連発するくしゃみ――間違いない、花粉症の症状だ。

 

 

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 暖冬で飛散が早いと聞いてはいたが、まさかバレンタイン前から始まるとは。


 鼻が詰まると頭の回転が鈍くなり、読書の上にも障りが出てくる。文章を文章として認識できず、文字同士の接着が薄れ、ばらばらになって紙面の上を好き勝手に乱歩している感じがするのだ。何を言っているのかわからないかもしれないが、それこそ花粉の影響である。


 めしを喰うように本を読む私にとって、これほど辛いことはない。


 春をして地獄の季節と、一年のうちで最悪の時期と嫌忌する所以はここに在るのだ。総飛散量が少なめなのがせめてもの救いか。早く来た分だけ、早く過ぎ去ってくれればよいのだが。

 

 

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