書棚を飾る『蠅と蛍』。
佐藤惣之助の想痕、あるいは随筆集。神保町のワゴンから
本書の見開き部分には、
必要最低限度といった、ごく控え目な書き込みが、これこの通り為されてる。
白楊
辰澤様
と読むのであろう。
白楊――。
佐藤惣之助の雅号ではない。
では誰だ。
画家である。
本書の絵画装幀を担当したる絵描きの名。それが井上白楊である。十中八九、この人からの贈り物であったろう。
受け手側たる「辰澤様」がいったい誰を指すものか、こちらはどうにもわからない。個人的に親交のあった者であろうか?
とまれかくまれ、著者謹呈は屡々見たし持ってるが、こういうケースは初めてだ。
ちょっと新鮮な喜びと、また驚きを味わった。
その情動が醒めやらぬ間に、ここまで一気に書き上げた。
我ながら粗忽な文ではあるが、たまにはこういう試みも、さまで無為ではないだろう。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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