穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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「数え唄」撰集

 

 

 一にいづめられ
 二に睨められ
 三にさばかれ
 四に叱られて
 五にごきはぎ洗ひすすぎさせられて
 六にろくなもの被せられないで
 七に質屋にちょとはせさせて
 八にはづかれ
 九にくどかれて
 十にところをほったてられた

 


 青森県弘前に歌い継がれる数え唄。
津軽海峡冬景色」の影響だろうか、本州の最北端たる弘前の名を聞くとどうしても、鈍色の空の下、寄せては砕ける荒波に、荒涼たる大地がどこまでも続く寂しい場所とのイメージが私の想念界から拭えない。
 この唄は、その印象を更に強化するものであろう。

 

 

CapeOfTappi View

Wikipediaより、津軽海峡竜飛崎) 

 

 


 一つふくれたふくべ餅
 二つ火箸で焼いた餅
 三つ見事に飾餅
 四つよごれた小豆餅
 五つ医者どの薬餅
 六つ娘の配り餅
 七つ七草雑煮餅
 八つ屋敷の供餅
 九つ此の家の胡桃餅
 十に幸いなんば餅

 

 
 そこからいくらか南下した、秋田県仁井田村にて歌われていた唄である。
 長い長い冬ごもりのさ中にも、楽しみというのはあるものだ。

 

 

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 一つ日の本神代の昔
 二つ不思議にかの真鶴が
 三つ瑞穂を啄へ来て
 四つ世の中五穀の始め
 五つ磯部はその元ぞかし
 六つ昔の儀式のままを
 七つ鳴物謡ひに早乙女
 八つやあはあ、の聲打ち揃はして
 九つ此の御田を首尾よく植ゑる
 十で豊けき秋祈る哉


 一つ日蔭に藪鶯やぶうぐいす
 二つ麓に立返る雁
 三つ見るまに遠のく燕
 四つ夜明けに飛び来るからす
 五ついくひと啼く時鳥ほととぎす
 六つ向ふでほたたく水鶏くひな
 七つ名もなき稲葉の雀
 八つやたけや気も隼
 九つ木蔭にたたづむ寝鳥
 十で飛び来るかの諸鳥もろどり
 よりどりみどりに刺いてくりよとかんまへた

 


採鳥刺さいとりさしなる民俗芸能の唄。


 近年では沖縄に伝わる京太郎ちょんだらー鳥刺舞とぅいさしめーばかりが有名だが、かつては全国的に分布していた「舞い」であり、それだけに唄の種類も豊富であった。


 中でもこれは三重県に伝わるものであり、皇大神宮伊雑宮いざわのみや御田植祭おたうえまつりで舞い歌われていたものである。


 そういう意味では神道的な、半ば祝詞としての側面も持ち、口ずさめば清澄な気分に浸れるだろう。
 

 

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