腫物には

喰うのではない。喰って滋養を摂取して抵抗力を高めるだとか、そういう迂遠な手順を踏むにあらずして。──もっと、遥かに直截に、患部にピタッと貼りつけるのだ。
芋薬とか鰌療治とかいった奇妙な呼ばれ方をする、斯かる手口はくだんの「食医」石塚左玄が案出し、広めんとしたものである。
いや、「案出」と書くよりも、「復古」し「整備」したとでも表現しておく方がより実相には近かろう。同様の治療方法を記載した書は昔から、漢方医界にそれなりに存在したとも聞くゆえに──。
まあ、そのあたりの詮索は今、措くとして。
ともあれ左玄に則ると、芋薬とはまず里芋の皮を剥き、
露わになった身をおろし金ですりおろし、
およそ同量のうどん粉を入れ、
更に生姜を少々加え、
すり鉢にて丹念に混ぜ合わせることにより生成される物体で、
こいつを杓子やヘラ等で二分の厚さに塗った後、ガーゼや木綿、油紙にて被いをし、包帯にて固定する。そのようにして使用する。肋膜炎や盲腸や、リウマチスに対しても効果を発揮したそうな。

鰌療治は至ってシンプル、「名は体を表す」そのままに、
鰌を二つに裂いた上、
骨を除いた物体を幾つも幾つも拵えて、
これをペタペタ、貼ったり巻いたりするだけだ。
その際に、皮のついている側だけが患部に接触するように配慮するのが大事なところ。
所詮、いずれも抗生物質普及以前の工夫だが。まあ、現代社会に於いてさえ、解熱のためにキャベツを頭に被せたり、ノドの痛みを取り去るためにネギを首に巻いたりと、そういう真似に及ぶ手合いは一定数居るわけで。
それやこれやを考え合わせてみた場合、野蛮時代の風習と、一概に馬鹿にしていいものでもないだろう。
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