いつの世とても「天災」ばかりは予測がつかぬ。
つかぬからこそ「天災」なのか。
すべては
(Wikipediaより、浅間山)
たまたま麓の田園地帯を視察していた一行は、まず上からの爆発音に身をすくませて、次いでほとんど間髪入れずに生起した、足下からの狂瀾怒濤に度肝を抜かれ、飛びあがって驚いた。
田には水が満ちていた。
その水中に放されていた鯉どもが、突発した天変地異に泡を食い、めちゃくちゃに跳ねまわったのだ。
なにしろ三百数十町歩、東京ドーム七十個前後の面積が、一斉に沸き立つような大騒ぎ。「流石長官も浅間山の爆音以上に驚いたと云ふ一つ噺が残って居る」──。

以上述べしは、東京府水産試験場長・笠村確が往年明かせしエピソード。
彼の話は、
「まだある。鯉は生活力が頗る強い。炎暑中でさへ新聞紙に包んだ儘で二時間位は優に生きて居る。包を開いた時は死んで居る様だが、盥などに入れ新水をぢゃあぢゃあかけてやれば段々生き返って来る、冬なら湿った藁などに包めば二日位は楽に生きて居る。又、盛夏中稲田の水温が三十六七度に昇っても平気で泳いで居る」
更にこのような連鎖を起こす。
「鯉の生き血は不思議と急性肺炎の高熱を下げるのに効く。先づ鯉の頭を切り落し血を盃に受け血が凝固しない内に一息に飲み干す。然るときは四十度近くの高熱はすぐに平熱近くに降る。之は私が体験したのではない、私の友人が急性肺炎に罹り高熱で苦しみ、同君の希望により早速大鯉を三本届けたが、其の血を飲んで同君は完全に病を治した。それから同君の鯉の礼讃は物凄く、頻りに鯉の効能を吹聴して居る。鯉の血液が霊薬たることを信じて居る人は強ち同君だけではあるまい。尚この他にも薬にしたいからと云うて私の方へ分譲を申込んできた人は恐らく三十人以上はあったらう」
こんな調子で、鯉の魅力の伝道事業に余念のない人である。
(Wikipediaより、鯉)
──富士五湖に棲まう鯉どもも、昨夜の揺れにはさぞかし慌てたことだろう。
第一
その動揺する心のままに文字を打たせていただいた。
少しは常軌に復せたろうか。
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