ジョージ・オーウェルの著述に曰く──。
英国商人たちにとり、ナチス・ドイツは上得意。愛想を使って損のない、揉み手で寄るべき大口の取引相手であったとか。
一九三九年八月の末、世界戦争再演寸前、本当ギリギリ、間際まで、この蜜月は持続した。ユニオンジャックの守銭奴どもの手を介し、山のような戦略物資──錫、ゴム、銅にシェラック等が鉤十字の領内へ送り込まれたそうである。

(『BIOHAZARD VILLAGE』より)
しかも彼らは「まさか戦争にはならないだろう」と高を括りきっていた、「人類の理性はそこまで脆くないはずだ」と楽観主義を野放図に奉じていたのですらない。
むしろその逆、このまま事態が進行すれば九分九厘、戦争勃発は避けられないと正確な卦を立てていたにも拘らず、それでも将来の敵国へ物資を売る手を止めなんだ。理由は単純、今儲かるから、彼らにとってそれが偏に「ボロい商売」だったから。
度し難い利益至上主義。
それも目先の利しか追わない、国家百年の大計なんぞ欠片たりとも顧慮しておらぬ、最も程度の低い律。
一連の経緯の解説に、オーウェル自身は「まるで自分の喉首を斬ってもらうために人に剃刀を売りつけるようなものであった」と、寸鉄人を刺すような、痛烈な比喩を以ってしている。

(『DEATH STRANDING』より)
結局のところ商人相手に公徳心とか、常識だとか節操だとか、そういうものを求める方が土台間違っているのであろう。
利益のためなら自分自身の人間性に値札を掛けるも厭わない。
それが商人の
にしても流石に、今回ばかりはやり過ぎた。
見境なさの代償は単に彼らのみでなく、ほとんどすべての英国人の頭の上に「ツケを払え」と降り注ぐ、そういう破目になってゆく。
そのあたりの消息につき、再度オーウェルの言葉を借りれば、
「一九三九年九月、戦争が始まった。
まず、こういった塩梅か。

(同上)
総力戦と口で言うのは簡単だ。が、その実行の至難さよ。
官民一致し円滑に、理想的な戦争指導が行われる例というのは相当貴重、人間世界にほとんど望みがたい程の、奇跡に近いのやも知れぬ。
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