穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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伊豆の凡夫と鎌倉と


 雅号を非仏


 本名、凡夫


 彼はとにかく、徹底した男であった。

 

 

 


 実るほど頭を垂れるなんとやら。増上慢の悪徳にうっかり陥らないように、恭謙であれ、恭謙であれと絶えず己へ言い聞かす。緊縛趣味の偏執狂さながらに、我と我が身を律することに異様な熱意を注ぐ者、その目的の為ならば親からもらった「逸之助」の名を改めるのも厭わない。


 陸軍少将・伊豆凡夫とは、ことほど左様に徹底せねば已まぬ男であったのだ。


 日露戦争時代には陣中で屡々和歌を詠み、その縁からか、「聖将」乃木の覚えもめでたかったとか。

 

 

 


 先日、思うところあり、鎌倉附近を散歩した。

 

 

 


 稲村ヶ崎にぶちあたり白く砕ける波濤を眺め、

 

 

 


 極楽寺にて新緑の生む酸素を吸った。

 

 

 


 その際、撮影した写真。結構な数になっている。これらを展示するついで、間に文章を挟むなら、相応しいのはどんな・・・だろうか。ちょっと考え、然る後、浮んで来たのが伊豆だった。

 

 

 


 地名としての伊豆ならば、ちょうど相模湾を間に挟んだ向こう側だし、それに人間の方の・・・・・伊豆少将が「非仏」の号を称せしは、鎌倉の名刹・円覚寺にて禅の研究に取り組んだのが契機きっかけという。

 

 

 


 あるいは研究の気晴らしに、このあたりの海岸線へ繰り出して潮風を浴びた事例ためしとて、あったのではなかろうか。

 

 

 


 であれば彼もやはりまた、この地に所縁ある者だ。


 此度の筆者わたしの人選も、的外れには当たるまい。


 たぶん。

 

 

 

 

 


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