穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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猿の慾


「猿は偉い慾張りで、食物を与へると満腹して居りながら人にとられるのが惜しいと見え、争うて之をとり両頬の中へ入れる。頬が千切れさうになって尚入れようとする。そして、あとでそれを小出して食べるのです。
 それに比べると兎はまた反対に慾が少ない。僅かの豆粕くらゐで満足して幸福さうに暮してゐます。まことに従順な、物優しい動物であります。動物園の獅子や虎の餌食になったり、医者の実験台にのぼる日を前に控へながら、悠然とおとなしく遊んでゐます。
 喧騒貪婪なる猿の世界と従順温雅なる兎の世界──此の二つが飼はれたる姿のまゝ、生きた図を写したのが即ち此の絵であります」

 


 画家の竹内栖鳳が、自己の作品「飼はれたる猿と兎」について解説したモノである。

 

 

Monkeys and Rabbits - Takeuchi Seiho - Google Cultural Institute.jpg
(Wikipediaより、飼われたる猿と兎)

 


 読んでいて、どうも筆者わたし自身にも猿の性があると感じた。古本屋で良書に出逢いでもすると、次来るときにはもはや棚から姿を消しているかもと──他の誰かに買われるやもとの焦りから、元のところに戻す気力がどうしようもなく失せてゆく。

 

 後の後悔を想像し、胆汁の一気飲みにも喩うべき、そんな苦渋を味わうよりはと財布の紐がつい緩む。


 そして築かれる積読タワー。年々歳々高くなる、なるほどコレこそ私にとっての猿の膨れたホッペタか。

 

 

 


 どれだけ生きても内なる獣を御しきれぬ。


 その兆しすらさっぱり感じ取れぬとは。我ながら業晒しなことだ。

 

 

 

 

 


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