穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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「ロイド・ジョージは英国王」 ─誤珍回答私的撰集─


 そのむかし、とある巡査が昇任試験の面接で、


「日本の三府はなんだったかな」


 と訊ねられ、咄嗟に口を衝いて出たのが、


 ──別府、大宰府甲府


 であったことがある。

 

 

 


 むろん誤答だ、誤答だが、誤答にしても、こいつの質はけっこう高い。


 たぶん、おそらく地頭は、相当以上に優秀いのであろう。人並み以上の地理的知識を脳に詰め込んでいなければ、この三つは出てこない。


 なお、正解は東京、大阪、京都の三つ。まだ東京に府庁があった、戦前の珍回答だった。

 

 

Tokyo Prefectural Office and Tokyo City Hall

Wikipediaより、東京府庁)

 


 およそ笑話の種として、この種の錯誤は定番中の定番だ。文明開化以前より、落語の筋にも多々見受け得ることである。興味のままにもう少し、類似の噺を紹介すると。──


 海の向こうの北米大陸スティーブンポイント師範学校の生徒には「ヨコハマ」をして「さる有力なアメリカ・インディアンの酋長の名」と答えたやつが居たという。


 日本語と、アメリ先住民族固有の言語の間に、発音あるいは響きの上で何かしら、相通ずるが如き部分があるのだろうか?


 寡聞にして筆者わたしは知らぬ。


ロイド・ジョージ」を「英国王」と回答したのも、やはり同校の生徒とか。まあ、当時大英帝国玉座御座おわすはジョージ5世だ、混同するも無理は──いや、やっぱりだいぶ無理がある。


 大丈夫か合衆国、仮にも教師を目指そうという人材が、国際事情に斯くも暗くて。

 

 

Kinggeorgev1928

Wikipediaより、ジョージ5世)

 


 もっとも大日本帝国とても、「敷島の大和心」を「タバコの宣伝文句」だと、臆面もなく堂々と答えるマヌケを抱えていたりするのだが。本居宣長が知ったなら、さぞ暗涙にむせんだことに違いない。


「落花生」を「花散り実らずで世の落伍者なり」と解したは、トンチが利き過ぎたというか、度を越した深読みの産物とでも評しておくべきだろう。

 

 

 

 

 


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