今日びシベリアで象牙が出ると、その九割は中国人が買ってゆく。
中国人の技術者どもの指先で装飾品に加工され、更に高値で売りさばかれる。
しかし昔は
ここで云う「昔」とはつまり、ロシアに帝政ありしころ、ロマノフ朝の崩壊以前、二月革命勃発よりも前のことを指している。

(『Rise of the Tomb Raider』より)
大正七年、シベリア出兵が始まりを告げ、彼の地に対する日本蒼生諸君らの興味・関心が否が応にも高まると、それに応えるようにしてサッと筆を執ったのが、山崎直方なる学者。
機を見るに敏、需要と供給のいと麗しき関係性の実現といっていいだろう。
彼によって物された、簡潔なれどもよく気の利いた概説記事に則ると、
「毛皮と共に此地方に産する産物として稀しいものは象牙である。シベリアの寒地に象牙が出ると云へば人は怪むであらうが、実際商品として欧洲に送る程相当に多く出るのである。この象牙は勿論今日シベリアに象が棲息し、之を殺して獲るのではない。昔の地質時代に棲息したマンモスと称する巨象の死骸が氷の層中に横はり、幾十万年氷漬けにされたため、それが完全に保存され、皮も毛も体も満足に残ってゐるのである。…(中略)…狼などが崖を掘り此死骸を嗅ぎ当てたものを発見するとか、或は土人が掘って之を発見するとかして採取するので、其数量は少く、一廉の商品となってゐる。ペトログラードでは此象牙に細工して販売してゐる」
まず、このような調子であった。
どうも近年、温暖化の影響でシベリア各地の永久凍土が溶けだして、マンモスの死骸の発見が相次ぎ起きているそうだ。
それを狙った密猟者、闇商人の跳梁もまた多いとか。
「マンモス・ラッシュ」などという、一部界隈の人士らが過剰反応しそうな語句まで誕生済みであるらしい。

帝政時代からずっと、変わらず富源で在り続けてきた象の牙。
これもひとつの伝統か。
存外、枯渇せぬものだ。
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