穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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Ghost of Tokachi


 猛獣は日本国にも棲んでいる。


 である。あの毛むくじゃら且つ筋肉質な食肉類との付き合いは、屡々悩みの種である。奴らときたら人がせっかく手塩にかけた家畜を襲うし畑も荒らす、なんなら財産のみならず、いとも容易く我々の生命さえも脅かす。まったく以って厄介な、忌々しい生物だ。

 

 

多摩動物公園・エゾヒグマ・2

Wikipediaより、エゾヒグマ)

 


 奴らがあまりに勢いづいて目に余る害を齎すと、必然として人間側も相応の措置に訴えざるを得なくなる。


 昭和三十六年の北海道中川郡本別町のケースなぞ、まさに出色のそれ・・だろう。


 年号を見て、あるいは直感したやも知れぬが、一応明言しておこう。毎度おなじみ『日本の鉄道』から引っ張って来た情報である。


 例年にないハイペースな襲撃を受け自治体は、非常手段に打って出た。熊一頭を狩るごとに一万円の懸賞金を出すという思い切ったふれこみで、狩人どもの出動及び活躍を期待したということだ。


 たった一万と侮るなかれ。米10㎏が千円足らずで買えた時代の一万だ。現代の貨幣価値に換算して、まず十万は下るまい。


 リスクを冒す価値はある。狩人どもは緊褌し、照星を覗き込んだろう。

 

 

(本別の牧畜)

 


 リアル・モンスターハンターだ、まるで。


 明治の開拓初期段階にそういうことをやったとは夙に聞いていたところだが、まさか戦後になってまで似たような手を打っていたとは驚きだ。

 

 この当時と比較くらべると、猟師の肩身もほとほと狭くなったもの。警察の要請で実行った射撃で警察にしょっぴかれるなどと、そういう馬鹿な顛倒に見舞われる日が来ようとは、彼らの誰一人とて、まさか夢にも思わなかったに違いない。


 馬鹿といえば、『日本の鉄道』の同じ章には

 


「…また、シカも多く、市街地まで下りてくるのはザラ。列車にひかれて死ぬシカも年間六、七頭あり、国鉄を悩ませている」

 


 このような記述もみつかって、北海道の自然力というものがまだまだ強盛であることを、如実に示してくれている。

 

 

 

 

 

 

 


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