穢銀杏狐月

書痴の廻廊

事は起すに易く、守るに難く、其終りを全くすること更に難し。努力あるのみ。一途に奮励努力せよ。

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暑さにやられる


 意識をあまり一点に集約させ過ぎるがゆえに、心ならずも演じてしまう数多の奇行。


 パウル・エールリヒにはどうも、アダム・スミスの同類めいた、生活上の失格者とでも称すべき、素っ頓狂な側面が存在していたようだった。

 

 

Paul Ehrlich 1915

Wikipediaより、パウル・エールリヒ)

 


「先生は研究に熱中する結果研究問題以外の事は殆ど皆忘れて仕舞ふ有様で其物忘れは随分甚だしい、食事する事を忘れるなどは毎日の事でそばから注意しなければ家へ帰ることさへ忘れる、晩餐に客を招いて置いて其儘忘れる事などは度々の事で甚だしきは自分の家さへ忘れる事がある、或時などは絹帽シルクハットを忘れて一日に幾つか買込んだ事などもあった」

 


 エールリヒと戮力協心、助け合い。サルバルサンを、──梅毒の治療薬を完成せしめた日本人、秦佐八郎の証言である。


 共同研究者の言うことだ。


 まず、信用していいだろう。

 

 

Sahachiro Hata

Wikipediaより、秦佐八郎)

 


 暑さに祟られ、脳を溶かされ、わたしの中から注意力の蓄えが払底しつつある現下。


 勘違いとは知りつつも、一方的なシンパシーというものを、彼ら迂闊な天才たちに抱かずにはいられない。


 せっかく買い物に出ておきながら、何を買うのかぜんぜん忘れ、帰宅後はた・・と思い出す、このやるせない徒労感にもうんざりだ。


 夏というのは本当に、苦手な、嫌な時季である。

 

 

 

 

 

 

 


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